水泳を見学する理由

kimrer

水泳の授業を見学する男子が2人

「どうしていつも水泳は見学なの?」

「僕、水が気持ち良すぎてイきそうになるの。」

「イきそう?」

「そう。水にはいって、けのびをするでしょう?日の下にでて肌が焼ける感覚と、体を伝うなめらかな水圧と、人の体温と水温がまざったなまぬるさが性的なまでに気持ちよくて。」

「やばいね。」

「そうでしょう。」

「泳いだことがあるってことは、小さい頃はなんてことなかったってこと?」

「どうだろうね。親が厳しくて中学校2年まで水泳をしたことがなかったんだ。中学2年で初めてプールに入ったときに1メートルけのびをして。そこで水のキモチ良さを知った。それきり泳いだことはないけれど、もう何センチかでも進んでいたらイってたね。」

「それはまずい。中学2年でプールに参加できるようになったのはどうして?」

「母が死んだから。母は僕が焼けるのが嫌だったみたいで水泳を禁止にしてたんだ。水泳の授業にはじめて出て、サンサンの太陽のもとで、母を思いながら体操をしたときは生まれ変わったようで、歓喜の雄叫びを上げたよ。」

「それ聞いていいやつだった?」

「僕から話してるんだから、いいにきまってるでしょう。」

「それもそうだ。」

「きみは?どうして見学なの?」

「俺、足を怪我してるんだ。」

「大変だね。」

「そうでもないよ。周りが心配しすぎなだけ。準備体操くらいできるさ。」

「じゃあしようよ。」

「本当に?きみがいいならいいけれど。」

「いいさ。僕は自由だからね。」

「自由か。」

「そして共に雄叫びをあげようではないか。」

「ははは。いいね。みんなに白い目で見られそうだけど。」

「いっちにーさーんしー」

「ごーろーくしーちはーち」

「「うぉお──────!」」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

水泳を見学する理由 kimrer @ojb100

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る