夏の夜、低血糖

和泉ゆり

夏の夜、低血糖


靴ずれが痛む。足の指にぷっくりと腫れたできものができ、お風呂上りにそれを針で潰すと透明な液体が垂れてくる。


低血糖。夏になりやすいらしい。炭酸のジュースや甘いものを摂取すると治るという何ともかわいらしい病だ。


小田急善行駅。夏らしい入道雲と青空のコントラスト。

朝は2週間ぶりに大好きな先輩に会った。


昨日から関東は緊急事態宣言が発令している。それなのに研修という名目で大人数が閉じ込められ、私は途端に体調が悪くなる。

夏なのに何一つとして夏らしいことをしていない。27歳の夏。

27歳って女の中で一番きれいな時期って聞いたことがある。足の爪にマニキュアなんか塗ってみた。エメラルドブルーの夏らしい色。サンダルと合わせたらかわいいと思う。



かき氷を一緒に食べに行きましょうって約束は守られないまま夏が過ぎてしまうのかしら。もしくは守らないからこそ、頭の中に残っていていいものなのかしら。きっと彼は甘いものが苦手。私に合わせてくれているだけ。知ってる。



浅野いにお「うみべの女の子」の映画がもうすぐ公開される。

ソラニンぶりだって。大学生の頃にみたソラニンは本当に苦しくて、心がえぐられた。突っ伏して泣いた映画なんてあれ以来ないと思う。

映画館で観れるのが楽しみ。


気が付けば、ここ数年は映画館で映画を観ることを大切にするようになった。これはロンドン生活以来?ロンドンのミニシアターによく通ったなあ。お金がなかったからノッティングヒルのソファつきの映画館には結局行けずに、日本の映画を流すミニシアターで、映画好きの友人がよく連れて行ってくれた。苦い思い出、苦い町、ロンドン。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

夏の夜、低血糖 和泉ゆり @toumei10

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

同じコレクションの次の小説