海からの手紙

タキトゥス

過去

海によく出かける。

生まれてから今まで欠かさず来ていた。

海はブルーハワイのような美味しそうな色をしていた。透明で綺麗だった。


対照的に砂浜にはゴミがよく漂着して来る。

流木に混じってプラスチックのゴミとか瓶とか。

見ているとうんざりしてくるので毎日同級生の真優と一緒にパズルみたいに散らばったゴミを集めるのが日課だ。


今日は余りゴミがなかった。というか無いと言っても過言ではない。唯一砂浜に緑のガラス瓶のボトルが半分現れている。その瓶は他のゴミ達とは仲間外れのようで親近感が湧いた。


昔は友達が居なかった。

誰も話し相手がいなくて寂しい思い。

そういう時はいつも海に行った。

海の潮風に抱きしめられて、いつも慰められた。

泣いている時は私に波が囁いてくれた。

大丈夫だよって。


そして似たような境遇の真優と巡り合わせてくれたのは海だった。だから感謝している。


「すみれこの瓶見てみて、中に何か入ってる」

さっきの瓶を真優が拾った。

駆けつけて見てみると本当に何か入っていた。

見た感じただの紙切れ。

ノートの切れ端で書いたみたい。

「取り出してみたら?何か書いてるかも」

真優はその中の物に興味を示していた。

ガラス瓶は明らかに昔のもので霞んで透明度を失っていた。砂と瓶の摩擦によってざらざらな触り心地。


真優から瓶を受け取った。中に入っていたものを取り出すとそれが手紙だとすぐに気づいた。幼い子供が書いたようなひらがなだけで書かれた手紙。言葉を少し覚えたような-


「すみれ読んでみて、どんな内容なのか知りたい」

「わかった。読んでみるよ」


はいけい

しらないひとえ

わたしとともだちになってください

うみでまってます

〜〜〜より


単純な内容だった。

手紙の主は友達を求めている。

だけど手紙の主の名前は読めなかった。

そこだけ水で濡れたのかぼやけている。


「なんだ。ただの小さい子が書いた手紙じゃん。なんか宝の地図みたいなものを期待したよ」

真優の興味津々だった態度は一気に消えていった。

風船が一気に萎んだように。


それでも私はその手紙が何か重要なものだと感じた。なんというか友達を求めている、だけじゃないメッセージが込められている気がする。知ったばかりのひらがなでわざわざ手紙書くのには理由がある。この手紙の主が助けを求めているような-



太陽が沈みかけている。そろそろ家に帰る時間だ。

私はその瓶をポケットに入れた。

持っていたらこの手紙の主が誰か分かりそうだと思ったから....

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

海からの手紙 タキトゥス @pokcyhome128

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ