第7話

〜稽古1日目〜


爺さんと稽古を始めて初日。


「一度わしに勝てた如きで自惚れない方が良いですぞ。剣聖の秘技はそう易々習得できるものではありませんから」


まずは秘技を見せてくれるということで、カカシ相手に秘技を放ってもらうこと爺さんが技を放つと、一歩の踏み込みだけで瞬く間に遠くのカカシを真っ二つになった。

爺さんが言うにはこれを習得するには何年もかかるらしい。だが、俺は初見で把握できていた。

あの秘技とやらは特殊な踏み込み方と体のうねりにより繰り出される技であり、この程度であれば少し練習すれば習得できる。


「これがわし剣聖エルガーの秘技でございます。お主もやってみよ」


そう言われたが、ここで披露してやっても面白くない。俺はわざと下手にやって見せた。失敗した俺を見て爺さんは得意げに、


「無理じゃろう。この技は何年何十年と練習する内に身につく技じゃ。素人のお主では到底無理じゃよ」


爺さんは余程俺に習得して欲しくないのか「後は自主練でもしとけ」と言い残して稽古場を去った。


〜稽古2日目〜


その場で何十メートル先のカカシを斬れるようになった。


「よしっ!これで完璧だろう」


あの爺さんはまだ俺が秘技を習得できていないと思っているはず。明日今までの仕返しに戦いでも申し込んでみるか。

しかし、決して舐めているわけでなはい。もう一度戦えば、爺さんはまだ俺が見たことのない技を繰り出すに違いない。こちらも剣聖の秘技以外の奥の手を持っておかねば。

その後は剣聖の秘技と俺の流派の剣技の合成技を磨いた。


〜稽古3日目〜

なんとか合成技は8割の確率で出せる。これほど強力な技であれば、爺さんに勝つことができるだろう。

練習していると、リナが昼ご飯を持ってきてくれた。


「ありがとう。ちょうど腹が減ってたんだ」


サンドイッチの手作り弁当をリナが持ってきてくれた。


「これは無茶なことを言ったお詫びよ!最後まで頑張りなさいよ」


リナは弁当を置いて館に戻った。面白いお方だ。

作ってくれた弁当を食べ、爺さんとの戦いに備える。

弁当を食べ終わり少しすると、爺さんが休憩から戻ってきた。


「爺さん。今から木刀で戦わないか?」

「いいですぞ」

「だがただ勝負するだけでは面白くない。ここは賭けをしないか?」

「賭けですと?」

「どちらかが負けたら、勝った奴の弟子になるってのはどうだ?」


戦いの内容を伝えると爺さんが険しい顔を見せた。


「くだらぬことですな。そんな提案乗るわけが……」

「剣聖ともあろうお方が引くのですか?」


爺さんを挑発してみせる。


「そんなわけがなかろう!その闘い乗ってやろうではないか」


今まで俺が考えた戦略を知らずに闘い引き受けた。ここまでは計画通り。

先攻をどちらか話し合った結果、俺から仕掛けて良いとのことだった。舐められているな。

だがそれでいい。一定の距離をとった後、最初の攻撃を仕掛ける。

初手で俺は剣聖の秘技を放った……はずだった。

俺の木刀は空を切った。


「何っ!?」


あの技を使えるとは知らないはず……!それを初手で躱しただと!?


「お主ほどの実力であれば剣聖の秘技を身につける可能性は考えておったわ」


爺さんが前回の試合で怯んでしまった連続斬りの構えをとる。このままで剣捌きの競り合いに持ち込まれてしまう。

そうなってはスピード勝負で劣る俺は負ける。


「決まりじゃ」


あの時と同じく目に見えない速さの連続斬りを捌ききれず、食らった……はずだった。


「手応えがない……!?」


倒したはずの俺は霧のように消えた。


「奥の手は一つとは限らないぞ」


爺さんの背後から一撃を入れた。


「くはっ!」


攻撃により爺さんは倒れ、気絶した。

俺の流派は魔法を使って幻を作り出すのを主流としている。まぁこの街の住民には魔法適正がないため使えもしないし、知りもしないだろうな。

こうして、爺さんが弟子になった。

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ボディーガード伝 《100PV達成!》 色塚京 @irotukakei

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