第6話
館に帰り、爺さんに奴らのことを話した。
「お嬢様を無事帰還させたことは褒めてやろう。しかし得体の知れない者とお嬢様を遭遇させたとはやはりお前には任せられぬ」
爺さんの言う通りだ。リナは無事連れ帰ったものの、あの場で怯えてしまった俺には反論する資格がない。
これではまたクビになってしまう。
「爺や!まだ決めるには早すぎますわ」
リナが爺さんに物申す。
「猶予として1ヶ月の間爺やの下で修行させてみてはどう?」
「此奴に私が稽古をつけろというのですか!?」
「そうよ!1ヶ月でユーリが剣聖の秘技を習得すればクビをなしにしてあげるのよ!」
「剣聖の秘技を此奴が使えるはずがなかろうぞ。剣聖の家系であろうが習得するのに数年かかる技なのだから」
それほどの剣聖の秘技があるのか。他国で修行していた俺は初耳だな。
リナがくれたこのチャンス活かさねば。
「1週間で剣聖の秘技とやらを習得してみせよう」
そして稽古の日々が始まった。
〜稽古1日目〜
爺さんが休憩で紅茶を飲んでいる時、リナが修行の調子を爺さんに聞いた。
「ユーリの調子はどう?」
「まだまだですな。やはり小童には到底習得できないであろう」
「そう……」
〜稽古2日目〜
「ユーリの調子はどう?」
「少しは骨のあるやつだな。それでも無理であろう」
「まだなのね……」
ユーリ大丈夫かしら。でも、あの剣筋の良さなら習得できると信じてるわ。
〜稽古3日目〜
今日は俺の調子を見にリナが稽古を見学しにきた。
「どう?習得できそう?」
少し不安そうな顔で俺に聞く。
「コツは掴んできた。だがまだまだ稽古が必要だ」
「そうよね。私が唐突に言ってごめんね。焦って無理なこと言っちゃって」
「大丈夫だ。すぐ習得してみせる」
「そうだ。今日は昼ご飯持ってきたから良かったら食べて」
「ありがとう。ちょうど腹が減ってたんだ」
リナの昼ご飯を食べ、稽古に戻った。
〜稽古4日目〜
今日も稽古の順調を聞きにリナがやってきた。
「ユーリ!調子はど……、え!?」
衝撃を受けるリナの目の前には俺に跪く爺さんの姿があった。
「ユーリさん!どうかその技を私に教えてくださいませ!」
爺さんが頭を地につけて頼み込んでいた。そこに誇り高き剣聖の姿は無かった。
「ユーリ!これはどういうことなの!?」
何が起こっているのか分からないリナが聞く。
「何を言っているんだ?」
「昨日はまだ稽古が必要って言ってたじゃない!?」
「2日前に既に剣聖の秘技は習得していたんだ。昨日言っていたのは秘技と俺の流派の剣技を合成した技を習得してたんだ」
「そんなことあるわけ……」とリナが言うが全て事実。
納得できないリナのために技を披露することにした。
稽古場にあるカカシに向かって技を放つと、かまいたちのような強い風とともにカカシが真っ二つになった。
「お見事です!お師匠!」
爺さんがそう言い俺に拍手した。
「嘘でしょ……。私が爺やに何年も稽古してもらっても秘技だけは習得できなかったのに。なんだか悔しい……」
こうして俺はクビを回避することに成功した。
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