第5話
そこには信じれない光景があった。
リナがドラゴンの腕を剣で斬り落としていた。
「念入りにやっとかないとダメよ」
「お前、そんなに強かったのか?」
「幼少期に爺やが剣術を教えてくれたので、多少は戦えますが、さっきのドラゴンは私一人では勝てなかったでしょう」
「なんで一緒に戦わなかったんだ?」
それほど強ければ戦えたはずでは?
「お母様から男性は女性に助けられるのは恥だから助けられとけと言われたので」
これは一本取られた。
「花を摘んで館に帰るぞ」
リナの一撃で完全に倒れたようで、安心して二人で花を一束分摘んで洞窟を出られた。
無事にリナを館まで連れ帰れそうで安心すると、酷使した腕に痛みが走る。無茶しすぎたみたいだ。
「これでお母様にお花を供えれるわ。ありがとう」
リナが嬉しそうに飛び跳ねている。あれほど喜んでくれるとあそこまで戦った甲斐があったと思えるな。上手くいき油断していた。
「へぇ〜。あのドラゴンを二人で倒したのか。やるね」
知らない男の声が背後から唐突に聞こえた。
「誰だ!?」
声の方向にはマスクを被ったコートの男女が立っていた。
俺に気づかれずここまで近づいたのか?いきなり現れ、不気味な奴らだが、敵意はなさそうだ。
一歩近づこうとした途端、本能がこいつらに近づくなと言っているのを感じた。
「おまえらは何者だ?」
「君なら知ってるだろう?なら僕たちが答える必要はない」
俺がこいつらを知っている?どういうことだ?
「まぁ忘れてるならいいけど。じゃあね」
コートの男女が目に留まらぬ速さで姿を消した。これは見逃してもらったと見ていいのか?
隣を見るとリナが膝が崩れ落ちた。
「あなたよく耐えたわね。あいつらから異常な気配を感じたわ」
「ああ、分かってるさ。早くあいつらの気が変わる前にここから離れよう」
背後を奴らがついてきていないか確認しながら急いで山の麓まで逃げると、行きで乗っていた馬車が見えた。障害物を撤去して迎えにきてくれたのだろう。
「リナ、馬車に乗るぞ!」
二人で馬車に駆け込み、運転手に「急いで館に戻れ」と伝えた。運転手も何らかの事態が起きたのだと理解し、素早く街に戻ってくれた。
「ユーリ……」
リナが俺の手を握る。その手からは恐怖が伝わってきた。
街まで着くと俺たちは落ち着きを取り戻していた。
そして、恐怖のあまり手を握っていたことに気づき、顔を真っ赤にし、手を振り解いた。
「彼らのことは爺やと相談しましょう」
「ああ、いつあいつらとまた遭遇するか分からないからな」
今の実力ではリナを絶対に守り切れるとは言えない。次回あの化け物と遭遇した時の対策を考えなければ……
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