あの日、僕は君に恋をした。(下)

───そして一年後。

 

「あの日からもう一年か・・・。時が経つのは早いな」

「そうだねー。もう高校三年生で受験生だもんね」

「あの日出会ってから君といろんなところに行ったよね。カフェでお茶したり、海に行ったり、日帰りだと思っていたら君にまさかの一泊二日の旅行に連れて行かれたこともあったっけ。あの時は両親に誤魔化すの大変だったんだからな」

「あはははっ、そんなこともあったね。他にもお互いに誕生日を祝い合ったり、水族館のイルカショーで君がびしょびしょになったこともあったよね。でも───」

「でもすごく楽しかった。僕にとっての数少ない大切な思い出になった」

「これからもっと思い出を作って、数少ないなんて言えないようにしないとね」


 ふと手元を見ると桜の花びらが手の甲に乗っていた。

 周囲には桜が綺麗に咲いており、風が吹く度に花びらが空を舞っている。


「・・・私は君に人生の楽しみ方を教えてあげることは出来たかな」

「・・・君との出会いを境に僕の人生は大きく変わったよ。君は僕に人生を楽しむってことを教えてくれた。本当に感謝してる。感謝してもしきれないくらいだ」

「良かったー。安心したよ。あんな大口叩いておいて、分からなかったなんて言われたらどうしようかと思ったよ」


 彼女からはたくさんの抱えきれないほどの


「今だから分かることなんだけどさ」

「どうしたの?急に改まって」



「───あの日、僕は君に恋をしたんだ」



「・・・もう、遅いよ。そういうことはもっと早く言ってよ」


 僕は彼女の墓に花束をお供えし、手を合わせる。

 手を合わせて目を閉じていると、そよ風によって揺れる木々の音のみが聞こえる。


「スイートピーが好きって言ってたから持ってきたよ」

「ありがとう。覚えててくれて嬉しい」

「・・・君の分まで毎日を楽しむから」

「私の分まで思いっきり楽しんでね」

「また、来年も来るよ」

「うん、またね。また会える日を楽しみにしてるね」


 そうして僕は彼女の墓を後にした。

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あの日、僕は君に恋をした。 @Aoi_Hazime

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