あの日、僕は君に恋をした。
@Aoi_Hazime
あの日、僕は君に恋をした。(上)
───ごめんっ!遅れた!
その日、君は図書委員の仕事に遅れて来て、僕の前の席に座って話しかけてきた。
───私も図書委員になったから、今日からよろしくね。
───・・・よろしく。
正直、よろしくする気なんて微塵も無かった。
僕はただ、ほとんど人の来ない静かな図書室で読書が出来ればいい。
そう思っていた。
だが君は無愛想な挨拶を返した僕にまた話しかけてきた。
───ねぇ、君、毎日楽しい?
余計なお世話だと思った。
だから無視することにした。
だが、そう決めた時には既に僕の口は僕の意思を無視して動いていた。
───毎日が楽しい人なんていないよ。
普通に答えてしまった僕は表情には出さなかったが少なからず驚いた。
僕の回答を聞いた君は微笑み、もう一つ僕に問いかけてきた。
───じゃあさ、毎日を楽しめている人はいないのかな?
君は似ているようで本質が異なる質問を僕にしてきた。
───それは違うと思う。
───なんで?
君は怪訝な顔をすると思っていた。でも君は微笑んだまま僕の意見を深く追求してきた。
───毎日を
面識のない君になんでここまで素直に自分の意見を話しているのか不思議だった。
でもさらに不思議なことにそれを嫌だとは思わない自分がいた。
───でもそんな辛いことや嫌なことがある毎日を
僕の回答を聞いた君は無言で立ち上がった。
これで君は帰ると思った。
でも何故か君は帰るどころか僕の隣に座った。
───あはははっ、やっぱり君って面白いね。普通の人は二つ目の質問で『一つ目と同じじゃん』って言うんだよね。
先ほどまで静かに微笑んでいた君は元気に笑った。
僕と君以外に誰もいない静かな図書室に君の笑い声が響き渡る。
───私、君に興味が湧いてきた。図書委員を選んで良かったよ。
───僕は図書委員を選んだことを少し後悔してるかな。
───なにそれ、ひどーいっ
ひどいと言いつつも君は笑顔だった。
その表情が僕には眩しく見えた。
───・・・ねぇ、もう一つ聞いていい?
───・・・なに。
ここで『良くない』と言っても君は気にせずに聞いてくるんだろう。
それくらいはたった今知り合った僕でも分かった。
───毎日を楽しめるって知ってる君は毎日を楽しめてる?
───本を読んでいれば暇は潰れるし、それなりには楽しめてるよ。
───・・・人にはそれぞれの価値観があるからあまり強くは言えないけどさ、私には君は楽しんでいる人にはまったく見えない。
そう言うと、君は顔を近づけて先ほどの笑顔とは違って真剣な眼差しで僕を見ていた。
僕は反射的に距離を取ろうとしたが、君に肩を掴まれていて離れられなかった。
───それってただ暇を潰しているだけじゃないのかな?君は多分、毎日を
君は僕の手を両手で包み、俯いたと思うとすぐさま顔を上げて僕の目を真っ直ぐに見た。
その表情は自信に満ちあふれていた。
───これから私が毎日を───ううん、人生を楽しむってことを教えてあげる!
それが彼女との出会いだった。
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