第7話 やはり狭い場所はちょっと…

 正直、どんな部屋だったのか記憶がない。

 緊張して待合室で待っていた私は、ほどなくして呼ばれた。

 かなり重たそうな鉄製?のドアの向こうは、何だか見えない電波だか、電磁波だかが飛び回っているんだろうなー、と考えるだけで息が出来にくかった。


「こちらに上がって。」

 促されたのは狭いベッド。ベッド?


「ヘッドホンがありますからね。それをして下さい。音楽が流れてきます。私も時々指示をするかも知れませんが。」

「…はい。」

「緊張しなくていいですよ。」

「…はい。」(無理です。)


 白い制服を着た放射線技師さんらしき人が、何やら板状のモノを私のお腹にのせる。

「大丈夫ですか?」

「…たぶん。はい。」


 その後、低い機械音と共に、私は狭いドームの中にゆっくりと入っていった。


(うわー。せまっ。想像以上に狭い。)

 ヘッドホンがガサッガサッと音をたてる。


 ガサッ『聞こえますか。』

 飛行機の離陸の時に、マイクを通して少しこもって聞こえるキャビンアテンダントさんの声を思い出させた。


「はい。」

 って、私の声はそっちに聞こえてるんだろーか。いや、何か説明されたような…。でも忘れた。


『では、しばらくそのままで、なるべく動かないで下さい。ゆっくり呼吸して下さい。』

「…はい。」


 動かないでと言われたら、すごく動けないのがつらい。

 すぐに、ヘッドホンから癒し系の音楽が流れてきた。と、同時にゴウンゴウンと機械音もする。


(しばらく、頑張れ、私!)

 とりあえず、目をつむる。寝れそうな気配は全くないが、寝ちゃったらどうしようという不安もある。


(あーあ。ついにここまできちゃったなー。)

 私は感慨深い生板の上の鯉だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

子宮筋腫を育て上げました!~巨大子宮筋腫摘出記録~ ツヅク @murasakimama

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ