第6話 MRIの恐怖

私は別に閉所恐怖症ではない、と思う。

かつてMRIに入った事があるという友人が言ったのは、すっごく狭いドームに結構長い時間入らないといけないとイウコト。


(そもそも、MRIという英語の響きが既に怖い。)

何というか、不安は対応すべき相手が未知のものに対して抱きやすい、とか何とか書かれてあった文章を唐突に思い出す。


「はい。10番の方~」

「あ、はい。」

「中にどうぞ。」


今日の私は10番さんだ。

機械がある部屋に、大きな重そうなドア。低い重低音が響く。これがMRIの部屋か。重い。全体が。


ゴウンゴウン

低い音が扉の奥から聞こえた。


ドアの前の長椅子には、検査着に着替えたおじいさんが座っていた。

不安そうな顔。

目が合う。

私たちはどちらともなく、会釈して苦笑し合った。

(同病相憐れむってこんな感じか…。)


知らないおじいさん、何の病気か分からないけれど、頑張りましょう、お互いに!!


「こちらでお召し物全部脱いで、着替えて下さいねー。」

「はい、はい。すみません。」

看護師さんから促されたのは、突き当たりの一画だった。ロッカーにいろんなものを無造作に入れて、私も検査着に着替える。

ドアの前に戻ると、おじいさんの姿はなかった。


(いっちゃったかー。)


ポツンと一人で長椅子に座ると、がぜん恐怖が増す。

ゴウンゴウンと聞こえてくる音が胸に響いて、泣きたくなってしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る