魔法派と科学派という,2つの派閥がある……と聞くと,彼らがいがみあっているのが定番ですが,本話はほとんどそんなことはなく,基本仲良しです.各派閥の登場人物は多いけれど,彼らがどっち派だったか覚えなくてもいいほどです.
この話は,それよりもっと深刻な「2つの世界」の物語.なぜ,そのような「分断」が起きたのか……その謎がわりと序盤のあたりでほぼ明らかになるので「え,もうバラしちゃっていいの?」となりますが,本話の各章は,それ1つ1つで長編小説として成立しそうな読後感(それでいて,コンパクトにまとまっている)がある豪華な作りになっています.
世界の滅亡がかかっているというのに,よく「くすくすと笑う」彼らのユーモアは,困難に立ち向かうときに参考にすべきかもしれあせん.
ここは、天空に3つの月が浮かぶ世界。
微妙なバランスの上に成り立つ世界で、人々は安寧の時をすごしていた。それらを導いていくのは、魔術と科学のふたつの巨頭。しかし、扶助する間柄ではなかった。
平和に暮らす人々の前で、突然、夜の闇が世界を覆った。夜が明けなくなったのだ。そして、人々を照らしていた、その月にも異変の兆しが見える。
科学派の拠点はコントロールを拒絶されてしまった。同時に、魔術派の象徴と呼ばれる大導士は世界の崩壊を予見する……。
原因を探ろうと科学派が動くが、月には辿りつくことさえできず、航行途中で爆発に巻き込まれ、その生死さえも掴めない。
仲間を救うため、世界の崩壊を止めるため、魔術派と科学派が手を組もうとしている、まさに今、直視しがたい真実を知ることになる。
世界は救えるのか……?
この長編ファンタジー、世界観といい、文章の体裁といい、素敵なおとな向けの物語である。
とはいえ、若年層にとっても得られるモノは多いと思う。多くの人たちに読んでもらいたい物語でもある。