紺碧のテイルレス誕生~水の中から顔が出た~③ラスト

 メカカツオを抱えたテイルレスが、輪になって踊っているバッカ・コ・コアに訊ねた。

「あたしの、パイロットになってくれない?」

 コ・コアは、OKサインを出しながら言った。

「喜んでナリぃ」


 数日後──海水浴場をウキウキしながら多少迷惑なスキップで歩く、テイルレスの姿があった。

「パイロットも見つかったし、これで、あたしも巨大ロボットデビューかな」

 紺碧のテイルレスがスキップをするたびに、砂が舞い上がり海水浴客が宙に舞う。

 かき氷を売っていた、氷イチゴ怪人が顔に降りかかった砂を手で払っているのが見えた。


 海水浴場の別の場所からも逃げ惑う、水着のねーちゃんたちの悲鳴が聞こえてきた。

 低空飛行で飛んできた迷惑ロボット、暁のビネガロンだった。

 海の家が吹っ飛び、中にいたガニィ星人姉妹がビネガロンに向かって怒鳴る。


 テイルレスの前方に着陸した、ビネガロンが言った。 

「おまえか、ネットの自撮りやインスタグラムで話題になっている、女性型巨大ロボットの『紺碧のテイルレス』は」

「そうだけれど、あんたが『暁のビネガロン』」

 

 水着姿で、焼きイカを食べながら浜辺にいた、ロヴンが読者に向かって言った。

「怖いですね……ロボットバトル勃発ですねぇ、互いのパイロットがいる操縦席を狙って、ロボット同士の殴り合いですねぇ……頭部に操縦席があるロボット〔マジ○ガー乙タイプ〕なら、アッパーパンチで操縦者パイロット即死。腹部や胸部〔ガン○ムタイプ〕なら、ボディーブローで操縦者圧死ですね……テイルレスは、どこに操縦席があるのでしょうねぇ?」


 拳を握るビネガロン。

「おまえの操縦席は、頭か腹か?」

 咄嗟にお尻を押さえ守るテイルレス。

「そこか! そこにパイロットが乗っているんだな! 尻か、尻に操縦席があるんだだな!」

 逃げ出そうとするテイルレスを捕まえた、ビネガロンはテイルレスのお尻を平手打ちする。

「出てこい! バイロット!」

 ピシャ! ピシャ!

「きゃん」

 テイルレスは、ビネガロンにお尻を叩かれた瞬間、機体に電流が走ったような衝撃と同時に機械のハートがキュンと響いく。


 ここで、ロヴンが読者に向けてフォローに入る。

「巨大ロボット同士でも、女性型のお尻を男性型ロボットがピシャピシャ叩くのは、セクハラです……ビネガロンは帰った、秘密基地の迷彩ベースで女性パイロットの東雲から正座を強要されて、数時間に渡ってこっぴどく説教されました」


 ピシャピシャ叩かれる

たびに、テイルレスは顔を赤らめる。

(なにこの感じ……なんか変)


 ビネガロンが何度目かを叩こうとした時、テイルレスのお尻から、バッカ・コ・コアの声が聞こえてきた。

「わかったナリ、出るナリ……だから、テイルレスのお尻は叩かないで欲しいナリ」

 お尻がパカッと開いて、操縦席からコ・コアが出てきた。

「はじめまして、バッカ・コ・コアなり」

「おまえが、パイロットか」

 ビネガロンが手を伸ばして、テイルレスのパイロットを摘まみ出そうとした──その時。

 海から砂浜へ、オニヒトデと暴君独裁者の合成怪獣【鬼崎ネロ】が上陸してきた。

 悲鳴をあげて逃げ惑う海水浴客に向かって、月桂冠をかぶった暴君独裁者が言った。

「今日から、この浜辺はちんのテリトリーである! おまえら浜から出ていけ!」

 横暴な鬼崎ネロの態度に、ムッとしたビネガロンが片腕を鬼崎ネロに向ける。

「どてっ腹に風穴開けてやる……どてパーンチ!」

 発射されたロケットパンチに、すかさずコ・コアは長い布を投げて布の先端を巻きつけて、飛んでいくどてパンチの上に立って言った。

「この海洋怪獣は、あたしに任せて欲しいナリ、海の生物はみんな友だちナリ」

 コ・コアは空中で蹴り飛んで、どてパンチの方向を変えると、長い布を鬼崎ネロの首に投げて巻きつけて……そのまま、ネロを砂浜に引っ張り倒した。

「ぐえっ」

「陸の者に迷惑をかけては、いけないナリ」


 怪獣を倒した人間のバッカ・コ・コアを、テイルレスと一緒に並んで呆然と見ていたビネガロンが言った。

「おまえのパイロットすげぇな……素手で怪獣を倒した」

「うんっ、なんだかわからないけれど……すごい」

「おっと、浜でBBQやっている連中の近くまで腕が飛んでやがる……回収しねぇとな」


 砂浜に落下したロケットパンチの回収に向かうビネガロンの赤い背中を見て、またテイルレスのDカップミサイルの奥が「ドキュン」と高鳴った。


紺碧のテイルレス誕生~水の中から顔が出た~おわり

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