紺碧のテイルレス誕生~水の中から顔が出た~②
気を取り直した、テイルレスが納戸博士に質問する。
「それで、あたし何をすればいいんですか? あっ、ロボット同士で殴り合いとかは無しで」
「とりあえず、パイロット探しだな」
「パイロット? 自立型人工知能のロボットに? いらない、いらない?」
テイルレスを指差して叫ぶ納戸博士。
「己を過信するな! いいか、万が一おまえがバナナの皮でスッ転んで、雑居ビルを破壊したらどうする」
「今どきバナナの皮なんて道に落ちていないし、そもそもロボットが踏んで転ぶサイズの、バナナを食べるゴリラいないし」
「バナナの皮は例えだ。じゃあ、おまえが何かの誤作動で暴走して町一つを壊滅させたら、誰に責任追求が来ると思う?」
テイルレスは、メンテナンスを怠った制作者のおまえの責任だ! と言わんばかりに納戸博士を指差す。
なぜか納得してうなづく納戸博士。
「そうきたか、だろうな……制作者に責任が被さってくる、でもパイロットが乗っていてロボットを操作していたらどうだ。
ボクもおまえもパイロットを指差して『コイツが操縦して町を破壊したんだ!』って言いワケができるだろう」
「はぁ? そんな理由でパイロットを」
ふたたび、廊下でドアの隙間から覗き見していた家政婦姿のロヴンが、読者に話しかけてくる。
「卑怯な博士ですねぇ、パイロットに全責任を押しつけて知らんぷりするつもりですね、テイルレスも『自分は操られて町を破壊したんだ』って、言うつもりかな?」
テイルレスが納戸博士に聞いた。
「で……誰をあたしのバイロットに?」
「数々のロボットパイロットオーディションに挑戦して落選している、伝説の海カッパハンター娘『バッカ・コ・コア』だ」
「海カッパハンター? バッカ・コ・コア? どこにいるの?」
「知らん」
「はえっ?」
「だから、知らないと言っているだろう……おまえが海に潜って探せ、海にいるはずだから……たぶん」
「いい加減な」
こうして、テイルレスはバッカ・コ・コアを探しはじめた。
海に潜り、海洋怪獣たちにコ・コアの居場所を聞いて回るテイルレス。
ユラユラ揺れる、ワカメ怪獣たちがテイルレスの質問に答える。
「コ・コアなら、東の海で見たよ」
「見たよ」
「見たよ」
「無人島で一人キャンプしていた、浜に金色のメカカツオの巨大ロボットがいたよ」
「いたよ」
「いたよ」
ギャグマンガのような笑顔をした、ワカメが揺れながらしゃべる。
「金色のカツオロボット?」
「コ・コアの相棒なんだ、そのカツオの背に乗ってコ・コアは海洋を移動している」
「移動している」
「移動している」
腕組みをするテイルレス。
「う~ん、すでにロボット操縦者なのか……あたしのパイロットになってくれるかなぁ」
「コ・コアを探しているなら、オニヒトデと海に沈んだ暴君独裁者の亡霊との合成怪獣【鬼崎ネロ】には気をつけてね……アイツ、テリトリーに入ってきた相手には容赦ないから……コ・コアを見つけるなら海カッパがいる生息海域を探すといいよ」
「探すといいよ」
「探すといいよ」
「教えてくれて、ありがとう」
テイルレスは、海カッパが生息している海域の島にやって来た。
南国のカッパ島の海から、海面に顔を出したテイルレスが呟く。
「海域までやって来たけれど、いったいどこにコ・コアはいるんだろう?」
その時、テイルレスの肩によじ登る感じで、ココア色の肌をした金髪の水着少女が現れた。
長い金髪を束ね、水中メガネでシュノーケルを咥え、
テイルレスの肩に立って、大漁旗をひるがえしたコ・コアが言った。
「アレ? こんな岩礁あったかな?」
コ・コアは、テイルレスの肩に立っているコトに気がついていない。
その時、海が盛り上り、水飛沫の中から巨大な海カッパの皿頭が現れた。
それを見て、水中メガネをするバッカ・コ・コア。
「いたっ! 大きいナリ」
コ・コアが指笛を吹くと、海中から黄金色に輝くメカカツオが現れ。
メカカツオに飛び乗ったコ・コアは、
「ひゃっほうぅナリぃ!」
海カッパの頭に向かって飛んだコ・コアの銛が、海カッパの皿を突き刺す。
海中から上体を出して、絶叫する海カッパの王。
「ウギャアァァァァ!」
口から青白い光線を出して暴れる、海カッパの皿に突き刺した銛をつかんで、叫ぶバッカ・コ・コア。
「大物の海カッパ、捕ったナリぃ」
数十分後──島の砂浜に、両目がバツ印で成敗された悪い海カッパの姿があった。
島民の人の姿をした良い海カッパたちが、浜に集まってきて漁を邪魔していた悪い海カッパを囲んで祝い踊る。
腰にパレオを巻いた島民たちに混じって踊っているロヴンが、読者の方を向いて言った。
「カッパ島の島民は、海カッパを祖先に持つ人間なんですね。今は頭の皿と背中の甲羅しか先祖のカッパ痕跡はないんですけれど……悪心に心が染まると、先祖がえりを起こして悪いカッパになってしまうんですね……バッカ・コ・コアが退治しているのは、その悪い海カッパなんですね」
テイルレスは、ビキッビキッ元気に跳ねている、メカカツオを抱えて浜辺に立ち。
退治した悪い海カッパを取り囲んで祝い踊る、島民たちの踊りの輪の中に入って、一緒に踊っているバッカ・コ・コアを眺めた。
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