紺碧のテイルレスの操縦席はどこだ!

紺碧のテイルレス誕生~水の中から顔が出た~①

 山中にある館の避雷針に晴天に落雷する。

 館の地下にある、室内プールのような場所の前で白衣コート姿の、若い男がプールに向かって両手を広げて口調で言った。

「さあ、目覚めるのだ! ボクのかわいい女性型巨大ロボット『紺碧のテイルレス』!」

 水面に稲妻が走り、徐々に女性型巨大ロボットの頭が現れはじめる。

 目、鼻、口、喉、肩……と、競り上がるように3Dプリンターで製造されていく巨大ロボット。

 オッパイ〔胸部〕、腹、くびれた腰、形がいいお尻、太モモ、……と完成していく巨大ロボットは、足首辺りで頭が天井につかえて首を横に曲げる。

 人工知能内蔵の自立型巨大ロボットが、不満を漏らす。

「天井低いぃ」


 数分後──横向きで体育座りをしたテイルレスに向かって、生みの親の博士が自慢気に言った。

「3Dプリンターを使った画期的なロボット製造方法、これでボクをバカにしていた連中を見返して……」

 興奮している博士にテイルレスが、冷静な口調で言った。

「あのさぁ、ムダに熱く語っているところ悪いんだけれど……あんた誰?」  

「ボクは、おまえの生みの親の『納戸博士』だ」

「へえ~っ、あんた博士なの……でも人間から巨大ロボット生まれないし」

 テイルレスは指先で納戸博士をツンツンする。

「こら、でかい指でつつくな! 生みの親をなんだと思っているんだ!」

「だからぁ、人間からロボットは生まれないし……で、なんであたしを作ったの?」

「ふふふ……知りたいか」

「知りたいから聞いているんですけれど」


 納戸博士は、筒状に丸めてあったポスターを広げてテイルレスに見せた。そのポスターには『暁のビネガロン近日、完成公開!』の文字と赤いロボットの内部イラストが……それと、隅の方に丸で囲った『新橋博士』と書かれた人物の姿があった。

 納戸博士は、丸で囲われた新橋博士を指で指し示す。


「コイツを出し抜くためだ! ボクの大学時代の恩師で強欲の権化! 新橋博士よりも、ボクの作るロボットの方が優秀だと世間に証明して! 名声を得るために『紺碧のテイルレス』を作った! 金はいらない、名誉が欲しい」


 冷ややかな目で、納戸博士を見る、女性型巨大ロボットが言った。

「つまり早い話しが、名声を得るためだけに、あたしを作ったと」

「ぶっちゃけて言うと、そういうコトだ。ボクのテイルレスがビネガロンを倒せば、一気にボクの名声が高まって」

 また、納戸博士を指でツンツンするテイルレス。

「あのさぁ、そういうの制作者同士でやってくれない……ロボットを巻き込まないで、博士同士で殴り合いするとかして」

「ボクサーじゃあるまいし、殴り合ったら痛いだろうが」

「あたしだって、命令されてロボット同士で、戦うのイヤだ」

 二人に沈黙が続く。


 部屋前の通路で、ドアの前に立って隙間から中の様子をうかがっていた。第四の壁越え女神ロヴンが家政婦姿で、壁を越えて読者に話しかけてきた。

「ここであたしが見ている、紺碧のテイルレスの外見を少し読者のみなさんにお伝えしますね……3Dプリンター製作されたので、継ぎ目がないナイスボディですね。

逆光でシルエットだけ見れば水着か裸に近い、グラビアアイドル並みのスタイルです……バストサイズはDサイズくらいかな……では物語の続きをお楽しみください」


 コホンと咳払いをしてから、威厳を示すような口調で納戸博士がテイルレスに言った。

「では、これから。紺碧のテイルレスの機体について説明する」

「セクハラ博士、自分の能力なら自立型人工知能内蔵だから、インプットされていて最初からわかっていますけれど」

「誰がセクハラ博士だ、いいから聞け……まず、テイルレスの最大の攻撃は」

「一度捕らえたら、離さない協力な『地獄のハグ』ですね」

「先に言うな! 敵をギュッとハグして押しつけた胸のオッパイミサイルを敵に向かって発射する」

 テイルレスは、自分のDサイズバストを指で押す。

「柔らかい……このオッパイミサイルは、サイズが変わるんですよね。Dカップから・E・F・G・Hって感じに」

「だから先に言うな! 胸のミサイルの次は、口からは出る『ニンニクブレス』だ」

「日頃からブレスケアをします……口からニンニク臭は出したくないので、ミントとかローズの香りが出るように」

「勝手に臭いを変えるな! 攻撃力は以上だ、希望するならネーブルミサイルも装着可能だぞ……見た目が出ベソになるが」

「その装備は遠慮します……あれ? あたしのメモリーの中に、もう一つシークレットな攻撃方法がある? 黒い三角形の? これなんですか?」

「それは、着脱可能なパワーアップウェポンだ、今は使えない」

「はぁ? 攻撃方法はわかりましたけれど……不可解な移動方法が、あたしの体の中に入っているんですけれど? 『水から水へ移動』って、どんな原理?」

「知らん……肩が通る水面積の水溜まりなら、どこからでも移動して忍者のように飛び出せる……ネットで見つけた隕石を組み込んでみたら、できるようになった」

「そんな得体が知れない未知のエネルギー隕石が、あたしの体の中に入れたの!?」


 自分の、お腹をさすりながらテイルレスが言った。

「なんか、お腹の中に赤ちゃんがいるような感じがするんですけれど……ロボットなのに変」

「それが、水から水に移動できる隕石だ……【海ホタル石】と名付けた」

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