異界大陸国の【腐れ転生者地獄追放記念日】の真相〔後半〕再現ドラマ

 前回に引き続きどれか一つ平行世界の【アチの世界】── チェーン店のコーヒーショップ、ロヴンと転生の女神。

 ビデオカメラで撮影しながらロヴンが言った。


「前回の『秘密の女神にぽつんと怒られる! ナニコレ?』は、読者に好評でしたよ」

「番組名変化しとるがな……読者って何? 視聴者の言い間違いじゃ?」


「好評だったので、前後半に分けてインタビューしたいのですが? 後半は本人出演の『再現ドラマ』で……その後に、海外の映画の出演者インタビューみたいな感じで、撮影した場面を再現ドラマの前後に編集して入れて構成しますから」

「はぁ!?」


「ダメですか? 本人主演の再現ドラマ……あなたがダメなら素人演技のダイコン不美人役者で、女神の代役をたてますが」

「や、やるわよ! 女優やってやるわ!」

「交渉成立」

 

 撮影しながらロヴンの転生女神への質問は続く。

「今まで、異世界転生させてきた多くの者の中で、特に印象に残っている者はいましたか?」

 転生の女神は回想しながら、嫌悪感をモロに示す。

「いたわね……今思い出しても、胸くそ悪くなるヤツが一人」

 転生の女神の回想は、そのまま本人出演の再現ドラマへと移行した。


【再現ドラマ】

 転生の女神の前に、いかにも偏差値が低そうな男が、ひょっこり現れて軽い口調で言った。

「ちょっと、今 流行はやりの異世界転生したくなったので……ネーチャン。そこんとこ、よろしくぅ」

 転生の女神〔本人〕は、和式トイレ座りをしている若い男〔パカ〕を眺めながら、頬をヒクヒクさせる。

(なにコイツ、近所のコンビニに行くみたいな軽いノリで『異世界転生』って)

 女神が無言でいると、偏差値が低そうな男が聞いてきた。

「オレ、どうすれば転生できるんだ?」

「そうね、とりあえず……死んで」

「異世界転生って死ぬのかよ……カッケイ」

 転生女神は、コイツホンモノのパカだと思った。


「それじゃ、ちょっくら死ぬから、そこんとこよろしく……今住んでいるアパートの部屋にガソリンぶっかけて焼死でもするから、よろしくぅ」

「あんたねぇ、アパートの他の住人や近所の迷惑も考えなさいよ! 死ぬなら他人に迷惑がかからない方法で……しゅね死ね

アパートの部屋で自殺したら、あとあと事故物件になっちゃうでしょうが」


「じゃあ、高い建物から下を歩いている人めがけて飛び降りるんで、よろしくぅ」

「アポか! 下を歩いている人を、巻き添え転生させるな! 飛び降り自殺を目撃した人のトラウマにもなるわい!」


「じゃあ、海水浴場とかダム湖で入水自殺で、よろしくぅ」

「だからぁ、人に迷惑かけた死に方すなって! ダム湖の水が水道水に繋がっていたら、その水飲んだ人は気持ち悪いでしょうが!」


「走っている電車や自動車の前に飛び込むんで……よろしくぅ」

「乗り物の前に飛び出して死ぬのはNG、そんなコトしたら多くの人に迷惑がかかる……先に言っておくけれど死刑で死んだら。異世界転生はナシだからね、あと観光地で死ぬのもナシ」


「感電死、服毒、首吊り

凍死、餓死するんで……」

「電気会社に迷惑がかかる、薬局に迷惑がかかる、ロープ購入したホームセンターに迷惑がかかる、凍死は冷凍庫に侵入された会社と冬山の山岳救助隊に迷惑がかかる、餓死して腐乱したら……夏場は悪臭が酷くて、誰かに迷惑がかかる」


 否定され続けて、少しキレ気味になる偏差値が低そうな男。

「死んだら他人の迷惑がなんて関係ねぇだろう、オレのカーチャンだって『生むんじゃなかった』って愚痴ってるしよぅ……親泣かせる、ヤンキー息子でよろしくぅ」

 転生の女神が怒りの形相に変わる。

「ぬぁにいぃぃぃ!」


 しばらくして、怒りが鎮まった女神が穏やかな口調で……何かを思いついた笑みを浮かべながら言った。

「ガードレールがない、峠の崖からバイクを止めて飛び降りて死ぬなら、比較的迷惑が少ないから……飛び降りる前に警察に、場所を伝えてね。探す手間を省くために……まぁ、水が流れていない沢でない谷を見つけて転落すれば最悪遺体発見されなくても、カラスや野性動物のエサになるだけだから」

「よっしゃ! その方法で死んで異世界転生してやるぜぇ! オレを腹を痛めて生んで後悔している、カーチャンを無双転生して見返してやるぜぇ! よろしくぅ」

 転生の女神は、こいつホンモノのパカでアポだと思った。


【インタビュー】

 ロヴンが転生の女神に訊ねる。

「それで、その偏差値が低そうな人は、その後どうなりましたか?」

「あたしが言った通りに、警察に現在位置を電話で告げながら『これから、異世界に転生するんでよろしくぅ!』って叫びながら飛び降りて……死んだわよ」

「死んで無事に無双転生できたんですか?」

「誰が! あんな親不孝者を希望通りに転生させてやるものか! 恒星の黒点にある灼熱大陸に送ってやったわよ! そこで自己再生する生物と融合して未来永劫、燃焼と再生を繰り返しているわよ……もっとも、自分がどこに居るのかわかるはずがないから、火炎地獄に居るのと同じよね。あははははっ、ざまぁ」

「はぁ……そうですか」


 インタビューを終了したロヴンは、転生の女神の肩越しに、第四の壁の向こう側から覗いている、読者に向かって。

「ダメだこりゃ」

 と、呟いた。


異界大陸国の【腐れ転生者地獄追放記念日】の真相〔後半〕~おわり~

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