異界大陸国の異世界転生は……命がけ
異界大陸国の【腐れ転生者地獄追放記念日】の真相〔前半〕
「今日は、あの女性にインタビューしてみます……あの人、一般人を装っていますけれど『転生の女神』なんですよ……それじゃあ、インタビュー決行」
ロヴンは、ビデオカメラで撮影しながら転生の女神に近づく。
「お仕事中、突然すみません……『てめぇは何しにこの店に』という番組の取材なんですが、お時間よろしいでしょうか?」
いきなり、取材撮影された転生の女神は、驚いて飲んでいたコーヒーを勢いよく口から吹き出す。
「ぷはぁ……けほっ、あの番組の取材? えっ? あたしに?」
「(うわぁ、汚ったねぇレンズにコーヒーの飛沫が……ふきふき)お仕事は何をされているんですか?」
転生の女神が答える。
「あたしは女神です、このアチの世界とコチの世界を繋ぐ『転生の女神』やっています」
「ほうっ、これはまた珍しいお仕事を(最初から知っていたけれど、あたしも女神だから)……今までにどんな転生に関わってきたのか、よかったらお話ししていただけませんか?」
転生の女神は、ロヴンに向けてスマホの画面を見せる──そこには、板チョコにマンガのような線足が生えた、奇妙な生物が写っていた。
「なんですかコレ?」
「あたしが、異世界転生で最初に関わった転生者……ふざけた理由で死んで転生しようとしたからムカついて、動く板チョコに転生させてやった……ついでに溶けて魂ごと消えろ! って言ってやった」
女神の怒りは続く。
「与えられた自分の命を軽視して『来世や異世界に楽して』なんて単純な理由で自殺するヤツもいて……冗談じゃないわよ!
事故で子供を亡くした親とか、難病で生きたくても生きられない人とか、自殺した知人の葬儀に出席した人の気持ちを、ちったぁ考えろちゅうの! 安易に死んで異世界に逃げ込んで現実逃避すな!」
転生の女神は、コップの水を飲んで一息つく。
「怒りで取り乱してしまった……あたしも『転生』を全面否定しているワケじゃないのよ『一族の恨みを晴らすために、来世に転生した』とか『恋する者を追って前世から現世や来世に』とか
『前世で成し得なかったコトを達成するために』とかいう、ちゃんとした目的意識がある転生なら全然いいんだけれど……
『現世が平凡だったから、来世はたいした練習や努力もしないで、オリンピック選手に生まれ変わって楽して金メダルを』なんてのがムカつく……パカかぁ」
ロヴンが別の質問をする。
「レザリムスの【腐れ転生者地獄追放記念日】について語ってもらえますか?」
「あぁ、アレね」
露骨に嫌な表情で語りはじめる、転生の女神。
「あの事件は、あたしの黒歴史……転生女神になって、しばらくした頃に、それまでつき合っていた男神からフラれてね」
「…………そうですか」
「ヤケ酒を呑んで荒れていた時期だったなぁ、そんな時に次から次へと安易な転生希望で、死んでやってくる奴らが増えて……あの時はあたしも、どうかしていた。何も考えずに転生希望者を次から次へと、レザリムスに転生させてしまった」
「ほうほう……」
「チートなスキルで『無双希望』とか、
『ざまぁ希望』とか、『謝ってももう遅い希望』とか……オレつぇぇぇなんて奴も転生させた。強いスキルのストックが無くなったら、カススキルを与えて転生させたり……その結果、レザリムスに腐れ転生者が溢れて収拾がつかなくなった……あの石を投げれば転生者に当たる状態は……反省」
撮影を続けながらロヴンが言った。
「だから、女神であるコトを隠してレザリムスで先頭に立って、腐れ転生者を『出ていけ!』運動を開始して広めたと」
転生の女神は少し声をひそめて周囲を気にする。
「どうせ、ロクな連中じゃなかったからね……それぞれがイメージしている地獄に、叩き落として地獄送りしてやったわ……あははははっ♪」
高らかに笑う転生女神、ロヴンは読者の方を向くと小声で。
「早い話しが証拠
そう伝えた。
転生の女神は何も無い、空間に向かってブツブツ独り言を言っているロヴンを、不思議そうな顔で眺め首をかしげた。
〔前半〕~おわり~
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