凡人がタイムリープをした結果

成原良樹

第1話 自分

人は変わらない。


運命なんてものはない。


全ての事象はシナリオ通りに動いている。


今、この瞬間に、この道をこのスピードで、この順番に、この歩幅で。


風、太陽、排気ガス。


あらゆるものを感じながら生きていく。


それすらも、シナリオ。


全て決まっているとしたら。


そう思えるだけで、生きやすい。


僕がどれだけ願っても。


どれだけ祈っても、現状から抜け出せない。


僕はただ、誰かが描いたシナリオを生きている。


ダメ出しをされることはない。


カットもない。


人生にリハーサルなんてないから。


常に本番。


その辺の名前も知らないすれ違う人たちも、また、違うストーリーの主役なのだ。


自分の人生は自分が主役。


ありふれた言葉だけどその通り。


ただ、主役が凡人ってだけ。


普通。


面白味はない。


むしろ、つまらない。


26歳でフリーター。


特にやりたいことが見つからずに気づいたらアルバイトで食いつなぐ。


コンビニ店員。


レジが自動化される世の中ではあるのでいつクビになるかわからない。


別にクビになっても構わない。


ネットで仕事なんていくらでも募集がある。


休みの日は、引きこもり。


ネットで映画を観ては虚無感に浸る。


最高に面白いストーリーと出会えることを夢見て漁るが、つまらない。


誰かの作品の中の作品だから。


いつから、自分を殺して生きてきたのかわからない。


いや、自分なんて最初から無いのかも知れない。


親のシナリオで生きてきたけど、反抗して、結局元通り。


好きなように生きてみろなんて

言われたことがない。


そんな言葉、ドラマの世界だけだと思う。


僕のことを心配しているのは分かるが、

親自身もリスクを背負うことになるのが受け入れられないのだろう。


勝手に結論付ける僕がいる。


僕はどこにいるんだろう。


誰が作ったんだろう。


作品は羨ましい。


何度も推敲して面白さが追及できるから。


人生は一度きり。


修正できない。


やり直せない。


バイトが終わり帰宅した。


もし、仮に、

人生がやり直せたとしても、

凡人の僕が僕の思うような面白い人生を描ける訳がない。


わかっている。


分かりきっているが、

仮に人生をやり直せたとしたら、

面白い人生になるのか?


一つだけ、確かめる方法がある。


タイムリープだ。


最初の挫折は幼稚園児の頃のピアノだった。


26才の意識をもったまま、


タイムリープをしてみよう。


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