炎を操るという特別な才能に恵まれ、その無二のパフォーマンスにより栄華を極めた踊り子の、不慮の事故による転落とそれからの物語。
いわゆる異能の登場する現代ファンタジーですが、でも決して戦い(バトルもの)ではないお話です。
異能をパフォーマンスに使う踊り子のお話、というのも実は少し語弊があって、正確にはその踊り子の転落してからの物語です。
導入部、いきなり自らの炎により両腕を失い、以降の入院生活(療養生活)が物語の主軸。魅力はその描写の生々しさというか、「両手を失った」という現実を等閑には済まさないところです。
腕がないことによる生活の変化。直接の不便だけでなく、そこから波及するいろいろな手間や面倒。
例えば(これはただ両手の喪失だけが理由ではないものの)彼女がオムツを履いて生活していることなど、言われなければ考えもしなかったようなあれやこれやが、実感として皮膚にビリビリ響いてくるのがもう本当に読んでいて楽しい!
とはいえ、お話の筋そのものはものすごく真っ直ぐな、そして真っ当な友情の物語です。
結末に至るまでの苦悩や葛藤、その生々しさが魅力的な作品でした。
個人的には読後の余韻、というか幕引きのあの夢の終わりのような寂しさが大好き!