第11話 女神の強欲・神の力

「えっと、何故なにゆえ、僕は、アイスランドにいるのでしょうか?」


「もちろん、私の弟を養子にするためだよ!」


 聞いていない。結婚することは聞いたけれど、弟を養子にすることとかは聞いていない。

 そもそも、弟を養子にするとかできるのだろうか?


 ・・・多分、この天真爛漫、腹黒女神に常識とかはないのだろうけど。

 神様を脅してどうにかしちゃうのだろうけれど。


 強欲な女神と何でもできる神様って混ぜると危険なんだね。


「ところで、結婚の時に言っていた『結婚はお互いのことをもっと知りたいって思うからする』とかいうのは結局なんなんですか?」


「えっ?ああ、それね。私も弟のことを徹君がどう思っているのか見てみたいし、徹君は、超絶プリティーな私に興味津々でしょ?」


弟中心に興味があるだけだろ。って言いたかったけれど、その言葉は女神の行動によって霧散した。


 女神が柔らかく包むように、俺の手を握ってきた。

 15℃ほどのアイスランドの気候の中、女神の暖かい手に不覚にもドキドキしてしまう。


「いきなり、僕の手を握ってどうしたんですか?」


「えっ?私たち、結婚するんだよ?両親の目の前でくらいは手をつなぐくらいはしておかないと」


「そ、そうは言っても、いきなり握ることはないでしょ?」


 ドキドキを隠せずに動揺したまま、答えてしまう。


「ゴメンね。いきなり握ったらドキドキしちゃうよね?これから、手をつなぐ時は前もって言うね!」


 クラスどころか学校中をドキドキさせる笑みを俺だけに向けてくる女神。

 その言葉に、俺の心音は高まっていた。


(弟をいきなり、養子にするとか、手を握ってくるとか女神は何を考えているのか分からなさ過ぎて怖い。ドキドキが、可愛い女の子と手をつないでいるからか、恐怖からか分からなくなっている。

 世界一、吊り橋効果を実感している自信があるわ)


「今だけじゃなくて、また手をつなぐんですか?」


「当たり前じゃない!弟といるときは、弟を真ん中にして手をつなぐのは当然だし、他にも色々とアピールしなきゃいけないからねっ!」


 マジで女神の言っていることがわかない。

 何のために?誰にアピールすんの?


 女神、怖すぎ。

 アイスランドまできて泣きそう。


「アピールはしてくれなくていいですよ」


 俺は、女神に必死に抵抗する。


 だが、

「あれ~?徹君は私とそれ以上のこともしたいのかなぁ?弟のためなら、徹君がどんなに下衆いことを言ってきても答えちゃうかもねっ」


 そう言って、つないでいた手を話して腕を絡めてきた。

 胸ごと。


 当たっている~。だが、ここは、HEIJOUSINNだ!

 古今東西、色欲に振り回されたものは、最後には破滅すると相場は決まっている。

 カエサルしかり。伊藤博文しかり。エリザベートしかり。


 皆、色欲に溺れた奴は破滅している。・・・俺、ここで少しでも女神になびいたら死んじゃうのかな?



「とにかく、淑女がそんなことをするなんてよくないですよ」


「徹君、こんなことをする私を淑女扱いしてくれるんだ。ちょっと、嬉しいかも」


 広瀬さんは、頬を赤らめてそっと俺に胸を当てるのをやめた。


「当たり前ですよ。あなたは、結婚前の女性なのですから」


「徹君は考え方が古いなぁ」


 そう言いながら、ニヤニヤと女神は嬉しそうに笑う。


 俺だって、言っていることが古いのは自覚しているけれど、そうでも言わないと女神の魔力に胸が高鳴ってしまいそうなんだよ。

 なんだかんだ、可愛い女の子との旅行は悪くないのかなって思った。



 バチンッ


 油断した次の瞬間、俺は、背後から何者かに叩かれて、気絶してしまった。




 ・・・やっぱり、色欲とか色香に惑わされるのは死亡フラグなんだね。







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俺の影口を言っていた、あざと系美女と身体が入れ替わって、何故か付き合うことになった件 keimil @keimil

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