第10話 『こども』

「あの~、神様。同居人の真意が分からないのですがどうすればいいでしょうか?」


 俺は、神様に相談していた。

 ちみっこい見た目だが、これでも神様だ。何か有益なことを教えてくれるだろう。


「わ、わらわは知らんのじゃ!わらわは、悪くないのじゃ!!」

 しかし、神様は、精緻な顔を歪めて、見た目通りの子供っぽいことを言ってきた。

 どうやら、神様もあの女神の暴走に関わっているようだった。


 既に、俺と女神が結婚ができるようにと、頼んだのかもしれない。


 それにしても、目の前には、涙目のロリっ娘がいる。

 俺のS心が疼く。


「神様のせいで大変なことになってしまいましたよ。ちゃんと反省しないで、言い訳するなんて、ホントに神様なんですか?」


「そんなこと言わないで!わらわは、頑張ったもん。下界の秩序を守ろうと一杯努力したもん!」


 神様は、あふれんばかりの涙を零し始めていた。

 流石に、俺のS心も萎えてしまう。

(ちょっと、悪いことしちゃったかなぁ。それにしても、神様すら泣かしてしまう女神様は何なのだろうか?俺、生きてこの同居生活を乗り越えられるのかな?)


「すみません。少し言い過ぎてしまいました。それで、何があったのか教えてくれませんか?」


 俺は、中学の職場体験か何かで行った幼稚園児のことを思い出しながら、少ししゃがんで喋りかけた。


「ぐすん。もう、わらわを責めたりしないかのぉ?」


 上目遣いのロリっ娘に俺のS心が一瞬、疼く。

 我慢だ、我慢。

 紳士として、やりすぎはよくない。

 ソフトなS行為はいいが、ハードな奴はダメだ。こういうのは、後で恨まれない程度にやるのが大人のマナーだ。


「ええ、大丈夫ですよ。だから、話してください」


「あのな、あの女子おなごが、わらわにこの国の法律を捻じ曲げてほしいと言ってきたのじゃ」


「結婚のことですか?」


「結婚?まあ、結婚と言えば結婚のことじゃ」


「それで、神様は、どうしたんですか?」


「流石に法律を何個も捻じ曲げると、ママンに怒られるのでわらわは、嫌だと言ったのじゃ」


 神様、古風なのに、ママン呼びなんだ。

 しかも、神様にもお母さんがいるのね。一言でツッコミどころ満載だね。


「嫌だと言ったら、女神はどう言ったのですか?」


「このまま、遠くに行って自殺すると言ってきたのじゃ」

 女神、メンヘラ属性まで持っているのかよ。



「それの何が問題なんですか?言っては何ですが、たかが人の女一人が死んだからって神様的にはどうってことないんじゃないですか?」


「ばかもの!確かに、普段ならそうじゃが、今はおぬし達の身体が入れ替わっているじゃろ?下手したらお主の元の身体に、魂が引きずられて、貴様も道連れになるぞ!」


 ?

 わお!怖い。女神。


「それは、凄く怖いですね。でも、やっぱり、神様にとってはたかが人の子二人ですよね?」


 俺的にはよくないけど。メンヘラ女神の自殺に付き合うなんてゴメンだけどね。


「ダメなのじゃ!魂と、身体が100%適合していないところで人が死ねば天変地異が起こるのじゃ。何より、何の罪もない貴様が死ぬのも悪かろう。・・・それに、そこら辺の判断を下す閻魔様が、怖すぎなのじゃ。あやつの怒った形相は見ていられんわい」


 俺は、神様の言葉に苦笑した。

 神様はやっぱり、子どもの神様なんだと思った。

 子どものために頑張るのは、年上の役目だろう。

 そう思って、俺は、提案をした。


「それは、困りますね。なら、仕方がありません。女神の要求を受けましょう」


「ほんとかのぉ?」

 神様が宝石と思わせるほどの眩い視線を送ってくる。


「ただし、条件があります」


「なんじゃ?」


「僕らの状態が戻るまでの期間限定にしてください」


「なんだ、そんなことかのぉ。それなら大丈夫じゃ。むしろ、あの女子おなごからもそう言われておる」


「約束ですね」


 まあ、結婚って言っても、なんちゃって結婚だろう。キスとかをすることはないだろうし、ただの女神の気まぐれだろう。


 俺は、その時、そう思ったのだった。


 だが、もう少し考えるべきだったのだ。


 *


 翌日、俺は、彼女の両親のいる、アイスランドへと行く羽目になるのだった。

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