「缶詰」が登場してからずっと、私も缶詰の中身を考えていた。主人公と同様に、想いを馳せていく。読み進めていき、流れていく時間にあわせて、缶詰も少しずつ傷や錆なんかがついていっているのかもしれないなと、質感と手触りが次第にリアルになってくる。そして缶詰がリアルなものとなってくるとと同時に、「あぁ、そうだったよな」と、その外側に目を向けさせられる、その感触がまた素敵に感じた。自分が大切にしているものって何だろうなと迷った時にはぜひ読んでほしい作品。
『時間を入れた』そんな冗談のような缶詰が、不意に本物になってしまう。時が過ぎればすぎるほど、缶詰の中の『時間』も熟成されていく。缶詰の中に残った時間が、いつか日の目を見る日はくるのだろうか。