第3話 自分勝手な異世界召喚③

「嫌だ」

「何でよ!」

 口を膨らませ小さな少女は中身まで幼く見えてくる。


 このラリーこれで何回目だ? あわよくば情報をと思っていたが、別にこんなチビじゃなくてもいい。もっと知的で優しそうな女性にでも聞けばいい。魔王軍と対峙するよりは遥かにいい。絶対だ。


「あーそういうことか」

  俺の堅い表情を見て、何を思ったのか。少女は少し離れて頭を俺に向けて下げる。

「初めまして。ライゼディング・ロス・アルファノールです! ノルって呼んで!」

 そして俺の目の前に手を差し出してくる。とりあえず俺は出された手を取り、握手をする。


「よし! これで友達だね! じゃあ助けて」

「そうだな! これで友――なるか!」

 何なんだよ。もう面倒臭い。帰りたい。眠い。

 

 俺の不機嫌な顔をノルは覗き込むようにして見てくる。

「ねえ、私のこと嫌い?」

「ああ嫌いだ」

 

「ふーん」

 そういうと少し離れ、今度は得意げにカズの目を見る。

「じゃあ帰らせてあげなーい!」

「え?」

「だって私だもん」


 どういうことだ。⋯⋯まさか!


「お前が俺をここに連れてきたのか!」

「そうだよ!」

 カズはそれを聞き、ノルへ突っ込んだ。そして胸ぐらを掴み、前後へ大きく揺らす。

「てめえ!早く俺を!」

 唾を飛ばしながら怒号をあげるカズの口にノルは指を当てる。

「じゃあ私を?」

 

 そこで冷静になった俺は冷静に考えた。そして俺に残された選択肢は⋯⋯

「助けます」

「よし!」


 そしてノルは満面の笑みを俺に向けてきた。


 はあ、だっっっる。

 

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異世界召喚、無能力でも生き抜いてやる 〜クズな俺の革命譚〜 夜空 青月 @itsuk

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