タイトル通り……なんだけど、二人のすれ違いが、二人それぞれの目線から語られる。確かにこういうコントありそう(笑)でも、コントではない、世の中を生き抜いた人たちの痕跡。毎日会うあの人も、こんなのを抱えているのかな。そんなことを考えさせる作品。
おたがいいつも、長袖しか着ない、僕、と、私。ある日、ふたりはいつもの、長袖をめくって、互いの「傷」を確かめ合う。その瞬間、そしてそのあとに続く会話もとても自然で、ふたつの心に共鳴するものを強く感じさせて。登場人物ふたりの視点転換も見事で、読後感は心あたたまるものがありました。素敵な短編です。