1話 伊邪那美学園転入試験①

 15歳の夏。

 大分時期遅れのころに俺は高校の面接に来ていた。

 待ち時間、三階の校舎から運動場を見下げると、中等部の生徒等がサッカーやら野球やらのスポーツを繰り広げている。

「平和だな。」

 自然とその言葉を口にした。

 目的もなくしばらくその様子を見下げていると、教室から自分の名前を呼ぶ声がする。


「灰野君。灰野藍綺はいのあいき君。教室に入ってきなさい。」


 声に従い教室の扉を開き中に入る。

 机一つ置かれていないどこか寂しさを感じさせる教室の中には、黒のスーツ姿の男性二人、そしてその中心に若い女性の姿があった。

 高校生くらいだろうか。自分と比べてもあまり大差ない年齢に見える。

 輝くような金髪と雪のように白い肌は、西洋人形を連想させる。異様に惹きつけられる容姿の女性だ。


「そこの席に座って下さい。」


 彼女の指示に従うまま、俺は教室の中央に用意された椅子に腰かける。


「灰野藍綺。15歳。中学は一般の市立の学校で、その後自宅付近にある公立高校に入学。間違いないのね?」

「ええ。」


 彼女からの質問に俺は端的に応える。


「ここがどういう所か分かってる?」

「勿論。国立伊邪那美こくりつイザナミ学園。5年前に造られた超能力者の育成、軍人として育て上げるための学校ですよね?表向きは。」


 彼女の問いに対し俺は必要以上に、そして明確な悪意を込めて応える。


「一般の人がそこまでの情報をどこで仕入れたのというのですか?」

「そうですねー、企業秘密ということで。」


「そんな態度で落とされるとは思わないわけ?」

「ここでは実力が全て。ですよね?」


「もう十分ではないでしょうか?キアラ様。」


 彼女とそんなやり取りを続けていると、右端に座っていた男性により話を遮られた。

 男は立ち上がり続けて言う。


「彼の言っていることは正しい。それほどまでに実力に自信があるなら実技試験に移りましょう。構わないね?」


 彼は煽るように俺を指す。

 俺も立ち上がりそれに応えた。


「ええ。勿論。」

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