幻覚

かわら なお

 

くだらない世界に固執するぐらいだったらいっそ死んでしまおう

そう思い立って筆を執った

僕の最後を誰かに見られたかった


くだらないなんて思いながら何かに固執して考えて

くだらないことで悩んで

何もかも消し去ったあの夏

僕の中で区切りがついた

もう何もかもくだらなくていっそのこと死んでしまおうと思ったんだ

これは気まぐれ いつか覚める夢

足早に家に帰り衝動に任せ文を書く

誰かに読まれますように

そう願いながら


さてどこに死にに行こうか

いっそのこと頭でもおかしくなったふりをして飛び降りでもしてみようか

それとも入水自殺なんてやってみようか 今は夏 海水浴に来ている人も多いはずだ

それとも今から引き返してあの狭い暗い部屋で簡潔に終わらせるとしようか

そうなるとやっぱり王道は首吊りであろう

それともオーバードーズ? 

…一人寂しく死ぬのは気分が乗らない

僕は自己顕示力の塊のような人間だったらしい

一人の夜道を街頭に照らされながらそんなことを考えていた

だんだん頭がぼんやりして視界がかすむ

どうやら限界みたいだ

僕はそのまま道端に崩れ落ちた


まただ

起きて思ったのはそれだった

「お兄ちゃん」

まだ幼い妹がベット脇で心配そうに眺めてる

その横では医者と話す母親

全部消えればいい

そう願って目をつむった


薄暗い暗闇に非常灯だけが光る

夜が来たのだ

今夜は満月だ

僕は走った

誰にも見つからないように死にに行くのだ


もう無くなりたい

ただそれだけだった

それだけしか考えられない


意識が錯乱して

このまま海に落っこちたら僕はそのまま沈んで海の底で何を見るだろうか

夢のような話だった

早く終われと思ってきた世界がようやく終わる

もういいんだ

もういいんだ

終わりにしよう

もう何もない

さよなら僕の人生

きっと何も残らないけど

もう何もないんだから

何も残らないんだから







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

幻覚 かわら なお @21115

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ