第13話
「ルーベルもう終いだ。潰したいからしてるわけじゃないだろ」
手の甲に触れたのはどうやら3人組の長身の男だった。僕の右手を覆うように支えてくれ、ルーベルと呼ばれた巨体な男を制した。どうやら負けないで済むようだ。
僕は安心してルーベルの顔を見た。見た瞬間は憤怒の表情を浮かべていたが、だんだんとばつの悪そうな顔になっていき握る手の力もどんどんと緩んできた。
「そうだったな」
ルーベルは諦めたように言って手を解いた。
「合格だ。まあがんばれよ。死なねえようにな」
「あ、ありがとうございます」
ルーベルは僕の肩を大きな手で2度叩いて優しい声で言うとそのまま元いた席に戻っていった。あのままやってれば勝っただろうにえらく素直に引き下がったなと思った。
きっとそれだけあの長身の男があの3人の中で言葉の力の占める割合が多いんだろう。おかげで助かったのだ、元凶かもしれないが僕は席に戻ろうとする長身の男にも声をかけた。
「ありがとうございました。正直止めてもらえなかったら負けてました」
「それがわかってるならいいんだ。それにさっきのはルーベルがやりすぎた。自分の力を見定めてしっかりとやれよ」
「はい。がんばります」
どうやら認めてもらえていたらしい。背を向けたままだったがこちらも優しい声色で応援してくれた。
僕はやり切ったという嬉しい気持ちでスキップするのを抑えてテーニャの居る受付に戻った。
「うまくやりましたね」
「だな」
「まあ先輩は認めてなんて貰えなくても勝手に登録しちゃいましたけど」
「おいおい。認めてもらえたんだからそういうこと言うなよ」
ふふとテーニャは可愛らしく笑い安堵してるように見える。きっと少しは心配してくれていたんだろう。
「ところで登録証は今日もらえたりするの?」
「あー。それは明日にできるので今日は帰りましょう!」
「そうなのか。わかった。宿とかは訊けたのか?」
「もちろん!なんなら迷惑かけたのでってここから遠いけどアデラさんの両親が経営する宿屋教えてもらいましたよ。名前を出して1泊だけだけど安くしてくれるって!」
その情報を聞いてふと僕がアデラさんの方を見るとアデラさんは微笑んで頭を少しだけ傾けた。なんだか気分がかなりいい。僕はじゃあ行くかとテーニャに言い紹介された宿屋を目指した。
借金も返せたし、冒険者にでもなりますか! 来佳 @YSRaika
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