第12話
「おう。じゃあ見せてみろよ」
男は明らかにそうと言われるとは思ってない表情だったが、すぐに表情を治しこちらを威圧してきた。
僕は必死に考えてなにで証明するかを考えた。力はあると自分では思っているがどうするべきか。怪我人や大事にはしたくない。そうだと思い、僕はその男の横を通り抜け誰もいないテーブルに向かった。
「おい。どこ行くんだよ」
そんな声を無視してテーブルの向こう側へ行き、そして右ひじをテーブルに着け、そして手の甲を見せつける。
「おいおい。なるほどな。いいぜ」
男が笑いながらこちらに近づいてきて、腰を落とし僕の手を握った。手の厚み以上に相手の手が厚く感じ向こう側にテーブルがひずんでる気すらする。この巨体の男は見た目通りそういう人間だということが再確認される。
「ほんとにこれでいいのか?確かに魔力とかは感じなかったがよ」
「いいですよ」
「わかった。折らねえようには気を付けてやるから早く降参しろよ」
「そちらもお願いしますよ」
僕が嫌味を言うと不機嫌そうな顔をしてどこからか硬貨を取り出した。
「これが落ちたら始まりだ」
「わかりました」
「いくぞ」
男が左手で硬貨を上に投げる。僕は音が鳴るのを聞くことに集中しその時が来るのを待った。
カランそういう音が聞こえた。
僕はありったけの力を込めて相手の手の甲をテーブルに着けようとした。途端テーブルまで半分というところまでいった気がする。男の驚いた声が一瞬聞こえた後持ち直そうという呻きが始まった。だがそんなものでは止まらずじりじりとテーブルが近づいてくるのを感じる。勝ったな。後数秒だ。
悪あがきか声がピタッと止まり変わりに深い息が2回聞こえる。そんなことじゃ何も変わらない、そう思った瞬間に男の雰囲気が変わった。押し込んでいる手はいつの間にか岩のように感じ、それに違和感を覚えて相手の方を見ると体も倍ほどに大きくなったように感じる。まずい。僕は限界の力をすでに出している。だけどそれ以上の力を籠めようと必死に右手を意識した。耳の奥がサーっと音がするほどに力を込めているのに気づけば完全に腕は止まってしまっている。終わった。あんな風に始めたっていうのにそんな風に思ったとき自分の手の甲に何かが触れた。
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