第46話 一気にお金持ちになった僕

 メルビルとシエルと別れて商業ギルドに向かった。さすがに首都の商業ギルドだけあってとんでもない大きさの敷地にいくつもの建物が立っており、建物ごとに魔獣の素材や鉱石、食料、香辛料などの売買がされているようだ。


「魔獣の素材は入口近くで買取してくれるみたいだなぁ。早速行ってみるぞぉ」


 魔獣の買取りは入口近くの屋根だけが設置してあるところで行っているようだ。後ろの方では魔獣の解体をしているところが見える。


「買取りをお願いするだよぉ。すまねぇけどぉ、売却代金は4・4・2で分けてくれぇ」


「これも一緒にお願いします」


 買取担当にデモンの魔石を手渡した。


「これは……一体何の魔獣の魔石ですか……」


 巨大な魔石に買取の職員は明らかに動揺している。


「それはぁチェイスの魔石だからぁ今出さなくてもいいぞぉ」


「契約だと魔獣の素材は4・4・2で分けることになってたと思いますので契約どおりに分けましょうよ」


「そらぁさすがにあんまりだと思うがなぁ……」


「討伐したのはチェイス一人でだからちょっと俺も受け取りにくいぞ!」


「約束だからいいですよ。ところでどのくらいの値段になるんですか? 魔石はデモンのものです」


 話が進まないのでロックとライスは無視して買取担当と話を進める。


「デモンの魔石ですか……この大きさは前例がありませんのですぐには答えづらいですが少なくとも金貨千枚はすると思いますよ……金額についてはお時間をいただいて査定させていただいてもよろしいですか?」


「待つのが面倒なので金貨千枚で買い取ってもらってもいいですか?」


「これだけの品ですと査定後に競売にかければもっと値が付く可能性がありますがよろしいのですか? 金貨千枚でよろしければすぐに買取させていただきますが……」


「じゃあお願いします。最初に出した魔獣の素材と併せて4・4・2で分けて持って来てくださいね」


「かしこまりました。では少々お待ち下さい」


「チェイス……本当にいいだかぁ? おらぁ何もしてないのに申し訳ないだぁ」


 ライスの取り分は金貨二百枚、普通の生活であれば十年は暮らせる金額である。


「約束どおりですから何も問題ないですよ。これからも取引をお願いしますね」


「じゃあ俺は遠慮なくもらうぞ! これだけあれば斧が新調できそうだ! ありがたく使わせてもらうぞ!」


「じゃあおらぁもありがたくいただくだぁ。本当に何か困ったことがあればいつでも言ってくれよぉ?」


 しばらく待ったところで買取担当が戻ってきた。


「合計で金貨千と三枚、それと銀貨二枚です。ご要望どおり分けていますのでお確かめください」


 ロックとライスは一枚ずつ金貨を数えているが僕は面倒くさいので軽く中身を見て腰に袋をぶら下げた。


「これだけ金貨があると保管場所に困りますね……」


「おらぁ後で商業ギルドに預けにいくぞぉ。チェイスは冒険者ギルドに預ければいいんじゃないかぁ?」


「俺が連れて行ってやるよ! どうせ冒険者登録もせんといかんからな! 今の時間ならまだ冒険者ギルドも空いているだろ」


「じゃあ一旦分かれて、教会前で集合しましょう」


 ロックに連れられて冒険者ギルドに向かった。ロックの予想どおり日の高い時間ということもあり冒険者ギルドはガラガラだった。さすが首都のギルドだけあって受付窓口が五つもある。ロックは一番美人の受付嬢がいるところに向かって行った。胸元の名札を見るとミアと書いてある。


「冒険者登録を頼む! 二人分だ! あと金も預かってくれ!」


 ロックが机の上に冒険者証と金貨袋を乗せたので僕も同じように机の上に出した。


「エイジア王国D級のロック様とE級のチェイス様ですね。すぐに準備しますのでお待ちください。お金のお預かりは登録の後行いますのでお待ちください」


 しばらく待った後にミアが戻ってきてエイジア王国で行ったように魔石に魔力を登録させられた。冒険者証の色はエイジア王国と同じようだ。


「これで登録が終わりました。お金のお預かりもできますがおいくらお預かりいたしましょうか?」


「とりあえず金貨四百枚頼む! チェイスはどうするんだ!?」


「じゃあ僕は手元に金貨十枚残したいので……三百九十枚を預けます」


 受付嬢のミアは信じられないものを見たように目を白黒させている。


「ロック様が金貨四百枚、チェイス様が金貨三百九十枚ですね。ではこちらが預かり証になります。紛失された場合は再発行には大変時間がかかりますし、再発行手数料として額面の一割を頂きますのでご注意ください」


 ミアから金額の書かれた預かり証を受け取った。


「預かり証は他の人が持って来ても金貨の払い戻しができるのですか?」


「冒険者ギルドの預かり証は本人でないと払い戻しはできません。他の方の払い戻しを希望される場合は商業ギルドにてお手続きをお願いします」


(商業ギルドを使えば預かり証での売買もできるのか! それは便利だな)


(何が便利なの? 他の人が払い戻せるのって怖くない?)


(うーん……例えば金貨一万枚の買い物をするときに全部金貨で支払うんだったら持ち運びが大変だろ? 預かり証があれば預かり証で支払うことができて支払いが楽になるからな)


「さあ手続きも終わったし飲みに行くか! 姉ちゃんも一緒に飲みに行かないか?」


「またの機会にお願いします」


 ロックはいつも振られているような気がする……とてもいい人なのだが顔が怖いことと話し方が乱暴なせいで損をしている気がする。


「ロックさん、今日はメルビルさんに食事に誘われているでしょ!」


「お! そうだったな! 姉ちゃん悪いがまたにしてくれ! 今度また誘うから楽しみにしといてくれ!」


 勝手に誘われて勝手に振られた受付嬢がかわいそうだと思った。

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