第26話 殺しがばれた僕
前日は遅くまでかなりの酒量を飲んだと思うが、翌朝は二日酔いになることもなくいつも通りに起きることができた。
(昨日のことは引きずってはなさそうだな。腹が減ったから早く朝飯に行くぞ)
ちなみにルアンナとは別々の部屋で寝ている。ルアンナは同じ部屋で寝たがっていたが、なんとなくメイドのリリーに怒られる気がしたので断った。オッ・サンからはいくじなしとバカにされてしまった。
「オーク肉の食い納めに行くぞ! 酒や食い物も買いだめして持って帰るから今日は忙しいぞ!」
ルアンナに急かされるままに朝食を食べに向かった。オーク肉のベーコンと卵を一緒に焼いたベーコンエッグとパンが今日の朝食だ。昨日吐いた後は全く食べ物を口にしていないのでひどくお腹がすいている。
(この世界でベーコンエッグが食えるとは……欲を言えば胡椒か醤油が欲しいが、塩だけでも充分にうまいな!)
(卵って初めて食べたけどおいしいよね。毎日食べたいけど多分高いよね? )
「ちなみに今日の朝食はいくらくらいするんですか?」
「一人大銅貨三枚くらいじゃないか? オーク肉のベーコンも高いが、卵も結構高くてな。今日食っているのは普通の卵だが、魔獣の卵になると一個で金貨数枚はするぞ」
(魔獣の卵か……一回食べてみたいな。毎日魔獣肉や卵を食べようと思うと相当稼がないといけないな。魔法騎士団程度じゃ厳しいそうだから、やはり勇者か上級貴族を目指すか)
(魔獣肉や卵を食べたいだけなら冒険者の方がいいんじゃない? オッ・サンと僕なら毎日簡単に獲物を狩れそうだしね)
(それも悪くないな。昨日殺したタッドはE級であれだけ偉そうにしてたんだ、A級、B級までなれば女にも困らなさそうだしな)
朝食を終えた後は、ルアンナの買い物に付き合わされた。酒に塩に胡椒にハーブに酒、買う物は調味料とお酒ばかり、大量に買い込んでは宿に運んでもらうようにお願いしている。肉はオークを一体狩っていくから購入の必要はないらしい。あっちこっちの店で買い物をしていると、あるお店が目に飛び込んできた。
「先生、あの店は魔道具のお店じゃないですか? ちょっと見てみたいのですが……」
「別に構わんが、大したものはないと思うぞ。まあ、見てみるのも勉強になるかもな……」
魔道具の店は古ぼけた木造の建物で中には商品が所狭しと並べられている。一階だけが店になっており、二階より上は倉庫や住居になっているようだ。お店の中には調理器具や電灯など、どこの家でも見られるようなものから、武器なども並べられていた。
(この炎の剣とかカッコよくないか? 男のロマンだよな)
(ほんとだ! ちょっと欲しいかも……燃える剣で戦うのって、なんか憧れるよね)
「この炎の剣が欲しいのですがどう思います?」
売られていた炎の剣は金貨五枚の値札が付いている。ふつうの剣が銀貨三枚もあれば買えることを考えるととんでもない値段だ。
「私には切りながら燃やす意味が分からないのだが、なんか意味があるのか? そもそもアル君は剣を使わないだろう」
(そこまで冷静に返されるとなんか冷めてしまうな。これだから女は……だが、普通に考えればルアンナの言うとおりだな……ダメージが重複するわけでもないし、下手したら切口を燃やして止血してしまうかもしれんしな。炎の剣は男のロマンかもな……)
「ちなみに炎の剣はどういう仕組みで火がでるんですか?」
「この剣は魔法陣を使うタイプだな。柄のところに魔石があるだろう? そこから魔力を流して魔法陣を起動させ、魔力を熱に変えるようだ。魔法陣や魔道具については私も詳しいことは分からないから聞くな」
(魔法陣か……面白そうではあるが、ルアンナも分からないんじゃあ仕方がない。だが、いつか仕組みを勉強したいもんだ)
僕の自由時間を考えると魔法陣の勉強をさせられるのは何としてでも阻止したい。
「とにかく、剣についてはアル君の魔剣以上にいい剣はなかなかないし、炎の剣は諦めろ。どう考えても金の無駄だからな。どうしても炎の剣を使いたければ、魔法を剣に纏う練習をしろ。剣が痛むし、いいことは一つもないと思うがな」
(アル、なんとなく熱そうだから俺の本体に炎を纏うのはやめてくれよ?)
ルアンナがそこまで言うのだから本当に意味がないのだろう。僕は炎の剣を諦めて他の商品を見ることにした。
「こうやって見ると魔道具って調理器具や魔灯なんかの日用品がほとんどなんですね。魔灯なんかにも魔法陣が入っているんですか?」
「ほとんどの調理器具や魔灯には魔法陣は入っていないぞ。魔法陣は燃費が悪いらしいから、ほとんどは魔法陣を使わない別の方法で魔力を熱や光に変換しているそうだ。それも私は詳しくないから、詳しく聞きたいなら他の者に聞いてくれ」
(魔法陣を使わない魔道具の方が多いってことか? 炎の剣は期待外れだったがいろいろと勉強にはなるな)
その後も色々と店内の商品を見回ったが特に買いたい物も見つからなかったため何も買わずに店を後にした。
「やっと見つけた……チェイス君、ちょっと冒険者ギルドまで来てもらっていいかな? 聞かなきゃならないことがあるんだけど……」
店を出たところに駆け寄ってきた冒険者ギルド職員のエバは汗だくで息を切らしていた。間違いなく昨日殺したタッドの件だと思います……ルアンナは冒険者どうしの争いだから問題ないと言っていたが……横にいたルアンナの顔を見上げた。
「ちゃんと死体を処理しなかっただろ。ちゃんと教えなかった私も悪いが……仕方ない、面倒くさいが今回は私も付いて行ってやる。燃やし尽くせばただの行方不明で終わったものを……」
「そういう問題ではないんですが……とにかく早く来てください。冒険者同士の争いということなので捜査権は憲兵から冒険者ギルドに移っていますが、早くしないとギルド長が裁定を下してしまいます!」
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