「おかえりなさい、肉三郎! で、どっ……どうなったんだい!? 犯人はわかったの!?」


 おれが車内に入るや否や、興奮状態のサイモンがことの成り行きをいてきた。瞳孔どうこうは丸くなり、鼻息まで荒い。


「ああ、万事解決だ。犯人は人間の女の子だったよ」

「ええっ!? もう解決したの!? さっすが肉三郎! キミは猫の名探偵だね!」

「名探偵? いや、おれはなにも──」


 おれが続きを話すまえによろこび勇んだサイモンは、スウェット生地のシートの上を先程よりもピョンピョン高く上機嫌に飛び跳ねてみせた。もう雨水は出てこない。


「ありがとう肉三郎! 今度来るときは、クロマグロのお刺身を持って来るよ!」

「ああ、頼む。……ん? 刺身って……おい、おまえ!」


 意味深に髭袋を上げたサイモンは、銀灰色のつややかな毛を真昼の強い陽射しにきらめかせ、軽やかに専用出入口から飛び出ていった。どうやら、鰹節は盗らなくても刺身は盗んでいるようだ。


「……やれやれ、今度はノックも忘れんなよ」


 おれは助手席のシートのてっぺんに飛び乗ると、毛繕けづくろいを適度にやってから丸くなって目を閉じる。

 そして、暖かな光が射し込む車内で深い眠りについた。











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猫の名探偵 ~消えた鰹節~ 黒巻雷鳴 @Raimei_lalala

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