廃車を寝床として暮らしている野良猫・肉三郎と、割烹料理店の猫・サイモンの「3万円の鰹節」を巡る物語。
主な舞台となっているのは、春の嵐で水浸しになった廃車の中。
嵐によって、押せばじわっと染み出すほどに濡れた青色の後部座席と、それを肉球で確かめながら困惑する肉三郎。
そして勢いよく現れたサイモンによって水しぶきが舞う車内。
2匹の猫と、水しぶきをまき散らす猫の足。
まず、この光景を想像するだけで可愛い!
猫好きにはたまりません!!
2匹はサイモンに着せられた鰹節窃盗事件の濡れ衣を晴らすべく車内で話し合い、行動を起こすのですが。その様子がどことなく洋画に出てくる探偵っぽく、猫というキャラクター性とのギャップで独特な世界観が作られています。
テンポよくコメディタッチな雰囲気もあり、読めば読むほどクセになる作品。2匹の猫の、別のストーリーも読んでみたくなりました!
割烹料理店に住む猫のサイモンは、店の鰹節を盗んだ疑いを店主の妻からかけられてしまう。その濡れ衣を晴らすべく、野良猫の名探偵、肉三郎が立ち上がるーー。
猫同士のやりとりはアメリカンドラマのような雰囲気。打って変わって割烹屋の夫婦は江戸っ子気質満載の掛け合いを演じてくれます。と書くとなんだかアンバランスな気がしますが、この作品ではそれらがうまく混ざり合って非常にコミカルでポップな空気を醸し出しています。
そう言えば猫たちの名前も、肉三郎とサイモン。これも和風と欧米風のコンビですね。(サイモンはホックのサイモン・アーク、肉三郎は古畑任三郎,あるいはハック繋がりで怪盗ニックからでしょうか?)
ミステリ自体は非常にシンプルで、尺も短いのですいすい読了することができます。隙間時間の読書などにもおすすめです。