第15話 愛情

少しだけ変な日常が続いた。


お互いが意識しているのか、只々気まずいだけなのか。

いつもなら会話をしていた時間も、静寂な時間に変わっていた。

いきなり距離が縮まったからだろうか。

生憎、俺も椿さんも人付き合いが下手だ。

お互いどうしたらいいのか分からないのだろう。


ただ、呼び方を変えただけだ。

ほとんどの人はそう思うだろう。仲が良くなるための第一歩かもしれない。

しかし状況が違う。男女二人で生活をしているのだ。

ここから仲を進展させるとなると愛が生まれるだろう。


本の一説によると、愛の種類は4つに区別できるらしい。

男女間の愛・友愛・家族愛・無償の愛

俺自身が体験している愛の形は家族愛だけだ。

残りの3つは理解はしているつもりだが、実体験がない。

これでは愛情の本質と言うものが分からないままだ。



「何をそんなに考え込んでいるんだ?」

「これからの二人の愛の育み方ですね」

「…ふざけてるのか?」

「冗談です。間に受けないで下さい」


「…で、何にそんなご執心なんだ?」

「家族愛以外の愛情に触れたことがないなと思いまして。椿さんは他の愛情に触れた経験はありますか?」

「…なるほどな。この前貸した本の影響だろう?」

「そうですよ」

「影響を受けてくれるのは良いことだ。ほとんどの愛情には触れたはずだが…」

「あれは触れてないんですよね?」

「悪かったな。完璧な教師じゃなくて」


「経験したいのか?他の愛情を」

「…触れれば、少しは自分も変わるかなって思いまして。」

「それは良いかもしれないな」


「変えたいと思うなら、私も少しは協力してやる」

「無理にしなくていいですからね」


「…わかっているさ」






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天涯孤独なヒモが元担任に養われる。 蛇さん @djsnake12

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