第14話  距離

また嫌な夢を見た。

最近はあまり見なくなったのだが、やはり昨日の影響か思い出してしまうのだろう。

仕方のないことだけど、やはり慣れないものだ。


深夜0時を過ぎた辺りだろうか。

しかし、まだ先生の部屋の灯りは点いている。


「どうした?眠れないのか?」

「少し目が覚めてしまいました。先生こそ何してるんですか?」

「私は先程まで作業をしていた」

「そうですか。大変ですね」

「眠れないのなら、話でもするか?」

「…少しだけなら」


「ベットにでも座るか?」

「…いいんですか?」

「構わないさ」


同じベットなのに全然感触が違うように思える。

部屋の匂いも俺の部屋とは違い何か落ち着かない。


「あまり浮かれないでくれよ?」

「大丈夫ですよ。少し落ち着かないだけですから」

「そうは言っても君は高校生だろう?」

「欲情しないか心配ですか?」

「…一教師だからな」

「本気にしないで下さい。冗談ですよ」

「分かっているさ」


こう言った何気ない会話も少しは弾むようになって来ている。

少しの進歩だろうか。


「昨日のあれってどういう意味なんですか?」

「…言うな。私も少し感情が高ぶっていたんだ…」

「俺としては少し嬉しかったですよ」

「ならいい。だが勘違いはするなよ」

「何をですか?」


「君を支えるのは君との制約があるからだ。その他に理由は無いからな」

「分かってますよ、先生」

「ならいいんだ」


「なあ、佐藤。そろそろ先生と呼ぶのを止めてくれないか」

「なんでですか」

「私はもう教師ではない。担任の役すら出来ない屑だ。先生と呼ばれるのは少し気が引ける」

「そうですか。なら、冬風さんでいいですか」

「それでもいいが、少し他人行儀過ぎないか?」


椿さん。これでいいですか?」


「…そうだな。悪くはないな」


「何が悪くないのか少し気になる所ですね」


「…私はもう寝る。お休み、


「おやすみなさい。椿さん」



……悪くないな。確かに。






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