運命の鎖に繋がれて
運命の鎖に繋がれて
作者 夢幻
https://kakuyomu.jp/works/1177354055443162586/episodes/1177354055443727062
二人の神しかいない時の無い世界にいるシロは友人のクロを殺したことで死後の世界となったことを知り絶望と後悔する物語。
詩・童話・その他のカテゴリーになっている。
確かに詩的で、メルフェンのようでもあるけれど、ファンタジーでありSF的なお話だ。
タイトルの「運命」という言葉が、このお話をうまく言い表している。運命は変えられるからだ。そういう内容なのだろうと想像させて、「読んでからのお楽しみ」と読者を誘っている。
サブタイトルは、シロとクロの関係を示唆しているのだろう。
少女二人がいるのは、「時の無い世界」と呼ばれているらしい。だれがそう名付けたのだろう。もともとそう呼ばれていたのか。いつから? 二人はどんな見た目をしているのか、わからない。
漠然と、白い人の形、黒い人の形をしているのかもしれない。
「薄く霧がかかった仄暗い森。蒼白とした木々はどれも同じような姿をしていて、枯れることも無ければ育つことも無い。ここはどこまで行っても同じ景色しかない、死んだ世界」
ここで、二人のいる世界を説明しながら、結論を言っている。
二人がいるのは「死んだ世界」だと。
シロはこの世界から出たいと願い、クロは永遠にこのままだと答え、「だったら、自殺でもするわ。死んでしまった方がよっぽどマシよ」と言い返している。
このやり取りも、これまで何度もくり返してきたのだろう。
クロが「死ぬって、なんだろうね?」と問えば、
シロは「じゃあ死んでみれば?」と言い返す。
クロはつねに問いかけ、シロはそれに対して答えを返す。
まるで、シロが鏡に映る自分に答えているような、自問自答をしているようにみえる。
クロという存在は、シロの影的なメタファー。だから二人は対に存在しているし、サブタイトルが運命共同体なのだろう。
二人は成長も枯れることも、代わり映えしない木々をみながら、「生きる」とは、「死ぬ」とは、「止まる」とはなにか――哲学的なことを言い合っている。これまでにも、おなじことを言い合い続けてきたのかもしれない。
社会とは、二人以上の人間がいること。
他人がいて、自分という個の存在が認識される。
生きるとは、人とのつながりを大切にし、自分のやるべきことやりたいことをしていうこと。
他人との接触を絶って、孤立無援としても存在できるのなら、人としての生き方は終わったのだ。それを神と呼ぶかどうかはわたしにはわからない。
ただ、「何かを食べる必要も無いし寝る必要も無い。呼吸すら、ね。ボクらは何年経とうが老いることもない」という存在は不老不死であり、人ではなく、シロのいう「神」なのかもしれない。
ラストでシロはクロを殺して一人ぼっちになり、「ここは、死後の世界になったのね………」と言葉を漏らし、シロは「時のない世界で、無限の寂寥感と虚無感に苛まれながら、永遠に死に続けた……」と幕を閉じる。
はじめから「時の無い世界」とは、死後の世界だったのだろう。
生者には影があり、死者である幽霊に影はない。
どうしてだかわからないけれど、シロは死に、そのとき影が消えなかったことで、煉獄のような場所で存在し続けてきたのだ。
影であるクロはシロからは離れないし、クロを消したシロは、本当に死んでしまったのだ。
曹洞宗の道元禅師が著した『正法眼蔵』より再構成された『修証義』には、「幸せとは何かを知ることこそが、人生において究め尽くさなければならないもっとも重要なこと」というようなことが書かれている。
一時な感情に流されず、自分にとってなにが幸せなのかを知ることが大切なのだろうと、読み終えて思いました。
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