家出をしたら女子大生に拾われてしまった。

家出をしたら女子大生に拾われてしまった。

作者 星海ほたる

https://kakuyomu.jp/works/16816700426230604324/episodes/16816700426231574751


 母親に嫌気を指して家出した森春汰は女子大生小田切日奈に拾われ同棲する物語。


 本編三話、外伝二話にわかれている。

 父親が他界したあと、仕事をやめた母親は酒癖が悪くなり、息子であり高校二年の森春汰を働かせて稼がせるも、体育の授業で骨折した彼に対して「働けないあなたなんてここにいる価値もない」と骨折した右足を殴打されたことで、家出を決意する。

 家出するとき、「事件や事故に巻き込まれたわけではない」と一筆書いていただろうか。事件性がないと警察は動かないことを彼は知っていただろうか。

 もし知っているのなら、家出したあとどうするのか計画を立てているはず。

 突発的な家出のように思えるので、そういうことはしていないだろう。

 そもそも、右足が骨折している状態で家出するのは大変だ。

 しかも、その後女子大生に拾われ、パン屋でバイトもするのだけれど、このとき彼の右足の状態はどうなっているのだろう。特に言及されていないので、とりあえず治ったのかもしれない。

 治ったのはいつだろう。

 家出する前か、あとか。

 家出して、どれくらい経過した状態で物語が始まっているのか。半日か、一日か、数日なのか一週間か。よくわからない。

 冒頭、行く宛も泊まる宛もなく、困っている少年に五百円を渡すと、残金百十三円となってしまい、途方に暮れたところを女子大生の小田切日奈に出会い、拾われる。 

 児童虐待防止法における児童は、十八歳未満の子どもの事を指す。

 主人公はこれに該当する。

 また、虐待を受けているので家出するならそのまま児童相談所へ行くか、子どもシェルター、ファミリーホームに救いを求めるか。警察に通報する方法もあるし、高校に通っていたので、誰かに相談しなかったのだろうか。相談できる人が近所の人や友人、親戚にはいなかったのか。

 あるいは、近所の人達は怪しんで189番に通報しなかったのだろうか。

 救う仕組みは、昔にくらべたらかなり構築されてきているのに、数が減らないという現状もある。お話の中も同様に、なんて世知辛い世の中なのだろう。

 女子大生が見かねて保護するのはよしんばいいとして、事情を聞いて、次のアクションへ移していない。せいぜいバイト先で雇うくらいだ。

 女子大生のお姉さんとひとつ屋根の下、というお話を書きたいのはわかる。

 読む側は無責任なので、そういう話が好きな人は興味をもってくれる。だけれども、作者は自分で生みだしたキャラクターをどう救っていけばいいか、もう少し考えても良かったかもしれない。


 母親はなぜ、どうやって、バイト先のパン屋に来たのだろう。

 一応親なので、心配はする。問題は、心配する理由だろう。世間体か、親の義務か、あるいは稼がせるために働かせるためか。息子が家出したあと、この母親は警察に行方不明者届を出したのだろうか。


 パン屋は家から数十キロ離れている場所にあるようなので、自家用車を乗ってきたのか、公共機関を利用してきたと推測。だとすると、来店した目的はなんだろう。美味しいパン屋があると聞いて買いに来たのか。あるいは、家出した息子を探していたのか。知り合いにパン屋ではたらく彼を見た人がいて、教えてくれたのか。

 

 母親は息子を叩き、声を上げて連れ帰ろうとする。

 バイト先に現れた母親に、「俺は家には帰らない!もうあんたの言いなりにはならない!」「今の母さんは大嫌いだ!もうあんな生活にはもどりたくないッ!」と言い切った主人公。それに対して母親は「あぁそう」と言い残して、店を出て行く。


 かなり冷静だ。

 主人公は、母親を感情的でヒステリーなDV毒親で、「悪魔のような人」だとまで言っているのに、その様子があまり見られない。店員たちの目を意識して控えたのだろう。

 息子が家出してからは、酒を飲んでいないのかもしれない。自家用車で来ているなら、だから運転できたのだ。

 息子が家出したあと、母親はある程度反省したのかもしれないし、していないのかもしれない。それはわからない。ただ、とりあえず自分の息子の居場所がわかったことで、良しとしたのだろう。


 その後、母親は来店することはなく、森春汰は小田切日奈と甘い日々を過ごしていく…‥では、問題を残したままであって解決したわけではない。

 かといって、この親子の問題を短編で解決するのはむずかしそう。なので、メインは女子大生とひとつ屋根の下で生活する日々、なのかもしれない。

 


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