家出をした僕を拾ってくれたのは優しい女子大生でした。
星海ほたる
本編
第1話『大学生に拾われる』
凍るような冷たい空気とパラパラと額にあたる雪。
俺はとある理由で家出中。
財布は持って来たものの、スマホは家に置いてきてしまった。
まぁ、追跡される心配もないので置いてきて正解なのかもしれない。
家から数十キロ離れた隣町まで歩いて夜の10時。
泊まる場所もなくショッピングモールを出てすぐの道路横にあるガードレールにもたれてじっとしているだけ。
手もすっかり冷えて喉も乾いたので自販機の前まで行くと、一人の男の子が自販機の下を覗き込んで泣いている。
不思議に思い声を掛けると、男の子は呼吸を整えてから弱々しく言った。
「あのね、この下にね五百円玉落としちゃってとれないの……」
「そっかぁ」
「僕の今月のおこずかいだったの……」
そして俺は自分の財布の残高を確かめる。
六百十三円かぁ……
俺は渋々財布から五百円玉を出して、男の子の手のひらにおいた。
「これでジュース買いな、残りのおつりはなくさないように持って帰るんだぞ」
「う、うん!お兄ちゃんありがとう!」
男の子は五百円玉を自販機に挿入し温かいココアを買ってその場を去って行った。
やばい、百十三円しか残ってない。
積んだな。
お金も泊まる場所も無く絶望する俺。
それでも夜空からゆっくりと降ってくる雪は綺麗なもので冷たくて手が痛くても悪くは思わなかった。
そんな時俺に一人の女性が話しかけてきた。
「ねぇ君、こんな所でなにしてるの?もう遅い時間だし補導されちゃうよ?」
「あぁ、大丈夫です。気にしないでください」
俺はそう言うと彼女はしゃがんでニタァっと笑った。
「君さっき泣いてる男の子にお金渡しちゃって財布空っぽでしょ?」
「いやまだ百十三円あります」
「百十三円でマウントとるなし、飲み物一本も買えないんじゃんよ」
そう言って彼女は笑うと口を開いた。
「家出してるんでしょ」
「俺に帰る家なんて元々ありませんよ。もう二度と戻りたくないですし」
「そっか……。じゃあ
「へ?」
「だって帰るところないんでしょ?お金もないし」
何を言ってるんだこの人。
もしも警察とかにバレたりしたら自分が不利になるに決まってるのに。
「でも見知らぬ男を家に入れていんですか?もしかしたら悪いやつかもしれませんよ?」
「それ自分で言う? でも君は私が見るからに優しそうでさっきも男の子が困ってるのを助けてあげてたし」
「いや、それは当たり前です。誰だってします」
「そんなことないよ。私が君と同じ状況なら助けられないと思うし、それを当たり前だと思える時点で君は優しいと思うけど?」
なんでそこまで俺に……
「で、どうする?君が決めな」
「じゃあ泊めさせてもらってもいいですか?」
「いいよー」
こうして俺は女性の家に泊めさせてもらうことになった。
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