私と彼と桜の下で
私と彼と桜の下で
作者 山形 さい
https://kakuyomu.jp/works/16816700426400321755/episodes/16816700426407001474
友達のおかげで卒業式に風邪で寝込んだ唯は片思いの悠に告白できた物語。
山形さいの応募作、三作目である。
主人公である唯とはべつに千鶴視点の回想が間に入っていて、描写も少なく、正直読みづらかった。
親が出かけたあと、「すると、私はベッドの布団に手をしがみつける」とある。しがみついた、といいたいのか。「布団を握りしめた」くらいでいいのではなかしらん。
唯はベッドに寝ていて、「その涙は布団に垂れ、濡れる」とある。
きっと、唯は仰向けになって寝ていて、目尻からつたって、敷布団に垂れ落ち、濡れたのだろう。鼻をすすって目をこすり、「泣かないって決めたのに」とすると、サラッと読めるので、音読して推敲すると良くなると思った。
***の印のあと、千鶴視点のパートが唐突に、会話文から始まる。
「唯、今日休みだって……」と裕子は言う。
「そうなんだ……」
私は下を向いた。
この「私」ってだれなのか、一読ではわからなかった。
この場面の前まで、家のベッドで寝ていた唯は「私」と一人称で書かれていた。
なので、唯が出てきたのかと思って、混同した。
ミステリー小説でミスリードを誘った手法なのか、あるいはベッドで眠った唯は幽体離脱をして、自分が欠席した卒業式の様子を見ているのかと想像してしまった。
唯の友人の千鶴と裕子は、欠席した唯のために「悠くん連れて卒業式抜けて唯の家に行く」計画をし、悠も賛同して唯の家に行き、彼女の卒業証書を手渡し、どこかの桜の木のところで唯は告白し、悠に抱きしめられて終わる。
作者は、このシチュエーションが書きたかったのだろう。
高校によって異なるが、人数もクラスが多い高校になると、卒業式はクラス委員が代表で卒業証書を受け取り、教室に帰ってから渡される場合もある。一人ひとり名前を読んで手渡しする学校もあるだろう。
どちらにしても、欠席者の卒業証書は担任が預かるか、クラス委員が受けとるだろう。
問題は、卒業式を抜け出した彼と彼女たちがどうやって唯の卒業証書を手に入れたのか。
そもそも、卒業式を抜け出す理由がわからない。
卒業式に参加できない彼女がかわいそう、と思うのはわかる。わかるけれど、終わったあとで二人は悠をつれて唯に会いに行けばよかったのではないだろうか。
なぜなら、抜け出してしまうと彼と彼女たちはもちろん、唯の卒業証書ももらえないからだ。これでは、彼女の家に行っても手渡せない。
時間に目を向けると、唯が眠ったのが午前九時。
スマホが鳴ったのは午前十一時。
ひょっとすると、卒業式に参加した三人は卒業証書をもらってから、担任の話とかクラスメイト同士の語らいなど最後のお別れを抜け出して、急いで唯の家へ向かったのかもしれない。それだと、卒業証書を唯に手渡せて、矛盾も少なくなる。
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