第15話 仇!

「パパ……ママ……」


 私は緑色のスライムを見て、思わずそう呟いていた。

 私の住む村を襲い、パパとママを殺したスライム。

 スライムに顔なんてないが、はっきりとその醜い姿は脳裏に焼き付いている。


「うぅああああああああ!」


 私は自分を勇気づけ走り出した。

 手にした杖を振りかざす。


「メディアさん!」


 タイガが私のローブの裾を掴む。


「止めないでください! 私のパパとママはこいつ! こいつに!」

「足が震えてますよ。そんなんじゃ、攻撃を当てることが出来ない」

「う……」

「冷静になって下さい。あなたの攻撃力じゃ勝てない」


 この時ほど私は自分が治癒魔法使いだということを嫌だと思ったことは無い。

 本当なら戦士や勇者になりたかった。

 この手で緑色のスライムを殺し、パパとママの仇を取りたかった。

 だけど、私は治癒魔法使い。

 この手は誰かを治癒するためにある。


「僕が倒します」


 タイガは一歩前に進み出た。

 緑スライムも体を這わせながら前に進む。

 その時、緑スライムの身体が一瞬震えた。


「待て! 俺が相手だろ!」


 3階建てはあろうかという緑スライムに飛び掛かり、剣を突き立てている男がいる。

 ブラウンだ。

 彼が剣を振う度に、スライムがプルプルと震えている。


「てめぇ! この野郎! 皆のだ!」


 彼はパーティメンバーを緑スライムに殺された。

 だから、その怒りをぶつけている様だ。


「無駄ですよ! スライムに刺突は!」


 タイガはブラウンにそう声を掛ける。

 だが、ブラウンは不服そうにタイガを一瞥するだけだった。

 剣は虚しく緑スライムにめり込むだけで、ダメージは与えられていない様だ。


「仕方ないなぁ」


 タイガは緑スライムの後ろに回り込んだ。

 小さい山を軽々と昇る様に、チョコンとハネた天辺に辿り着く。

 小袋からスライム専用クリーナーを取り出した。


超吸引スーパーダイソン発動!」


 スライム専用クリーナーから勢い良く風が出力される。

 緑スライムの頭頂部がクリーナーに吸い寄せられていく。

 だが、吸い込みが悪い。


「タイガさん! スライムが!」


 緑スライムが鉄の様に硬くなっている。

 実際、鉄の塊の様になっていた。

 これではクリーナーで吸い寄せることは難しい。


「鋼鉄化魔法……鋼鉄スティールか……」


 クリーナーは虚しく停止した。

 スライムを吸い込むことが出来ずに。


「ケケケケ……」


 バカにするような笑い声がする。

 緑スライムの脇から橙色の醜い矮躯が現れた。

 紫色のローブをまとったそのモンスターは手に、宝石が埋め込まれた杖を持っていた。


「ゴブリンシャーマンか」


 タイガはそのモンスターに切り掛かった。


つづく

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パーティから追放された雑用係はスライム無限増殖スキルに目覚めた! レベルアップして見返すために永遠にスライムを作って倒してを繰り返したら、世界がスライムだらけに! だから、責任取って全て駆除します! うんこ @yonechanish

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