第14話 キャンプファイヤー中はスライムに注意

「タイガさん……すごい……燃えてます」


 私は村の家々を焼き尽くす激しい炎を見て、足が震えた。

 逃げ惑う人々は、スライムに追い回されていた。


「僕のせいだ……」


 タイガが呻くような声を上げた。


「え?」


 僕のせい?


「あの時、無理やりにでも僕がクエストを引き受けていれば……」


『ランクF イスタル村を襲うスライム討伐』


 本当ならこのクエストはタイガが請け負うはずだった。

 だけど、横入りして来たブラウン達によって奪われてしまった。


「ブラウンさん達は、クエストに失敗したのでしょうか?」


 見れば分かることだったが、訊かずにはいられなかった。

 タイガは前を向いたまま無言で頷いた。


「ああ……」


 思わず声が漏れてしまう。

 クビにされたとはいえ、昨日までパーティを組んでいた仲間達だ。

 彼らのことは嫌いだが、身近だった人が死ぬのは良い気分ではない。


「行きましょう」


 タイガは一歩進み出た。



 燃え盛る村に一歩足を踏み入れた。

 熱波でローブから露出した肌がヒリヒリする。

 タイガはスライムを棘付きの棍棒で叩き潰しながら前に進んで行く。

 彼は潰れて分裂したスライムを、足で炎の中に蹴って投げ入れていた。

 私は倒れている村人に治癒魔法を掛けて周った。


 村の真ん中に大きな焚火台がある。

 その横にタイマツが何本も転がっていた。


「たっ……助けてくれ!」


 焚火台の陰から男が飛び出して来た。

 私をギルドでバカにした武闘家の男だ。


「おお! メディアじゃねぇか! 頼む治癒魔法を……」


 私はもう、治癒魔法はあと一回しか使えない。

 

「何でこんなことに……」


 私は回答を延ばした。

 最後の一回はタイガに何かあった時に使いたい。


「キャンプファイヤーをしてたら、スライムが襲って来て」

「え?」


 私と同じことを考える人がいたんだ……

 それも実行に移している。

 ……って、そんなこと思ってる場合じゃない。


「あなた達、レベルはいくつですか?」


 タイガが問い掛ける。


「レベル50台だ」


 武闘家の男が息を切らしながら応える。

 身体じゅうが傷だらけで、今にも死に絶えそうだ。

 タイガは顎に手を当て考える。


「レベル50台ならランクFのクエストは難しくないはずだけど……」


 だけど……この惨状は一体?

 タイガはそう思っているのか?


「俺達も楽勝だと思っただけど、話と違う。クエストの難易度が思ってたのと全然違うんだ。そんなことより、メディア……早く治癒魔法をっ……」

「メディアさん、治癒魔法を使って」

「え? いいんですか?」


 タイガは無言で頷いた。

 その時……


 ブッチュ!


 武闘家の男は空から降って来た緑色のスライムによって潰された。


つづく

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