「見張りの社」

低迷アクション

第1話

「この事は俺等だけの秘密だ。誰にも言っちゃならね?」


“F”が荒い息をつきながら“Y”を見る。夕日のせいで、顔は真っ暗、

表情は見えない。ただ、彼の二つの目だけが、異様な光を放っていた。


Fは学童疎開の自身に、唯一優しくしてくれた存在だ。村のガキ大将の彼は、

Yの話す都会の話に、目を輝かせながらも、彼の玩具や本には手をつけない、

対等の付き合いがあった…


だから、彼の度胸試しに同行した。簡単な話だった。しかし、終わった後のFの顔が、

何故か忘れられない。


翌日から村の鶏が襲われるようになる。小屋は血で染まり、金網は

獣が突き破ったようになっていた。


村の子供達がYを疑うが、Fが庇った。


「コイツはそんな事しねぇ、なぁ、そだろ?」


振り返った彼の口から、羽のようなものが見える。


限界だった。


5件目の小屋が襲われた時、Yは預かり先の叔父夫婦に全てを話す。しこたま殴られ、

物置小屋に放り込まれた後、叔母がFに含めるように言い聞かす。


「あれは、裏切った臭いを嗅ぎとるからね。今夜はここに隠れな。後は何とかすっから」


そう喋る彼女は、村の話をした。山深いこの地は、人の中に、山のモノが紛れる事があり、山との境に、社を立て、村を守った。今は廃れたが、社は残り、山に入れない子供達の

度胸試しの場になる。しかし、可笑しな事が起こり、すぐにやまった。


それを確かめたくて、Fはお前に近づき、結果として、自分が取り憑かれたのだと…


叔母の話に納得できない。しかし、都会から来た余所者を何故、彼は受け入れた?

気に入られようと、用意した贈り物を、どうして受け取らなかったのか?

そう言えば、Fは自分と遊ぶ時には、仲間を連れてこなかった。


いつも、2人、2人だけ…友達じゃない。少なくともFはそう思っていなかっ…


意識が遠くなり、次に目を開ければ夜…身を起こしたYは、小屋の隙間から漏れる明りを

見つめ、


それが横に並んだFの目と言う事に気が付いた時、悲鳴を上げる。


小屋に貼り付いた彼は、血の滴る口を大きく開け、何かを喚きながら、薄い板を叩いている。Yは反対の壁まで下がり、助けを呼びながら泣き叫んだ。


騒ぎに気付いた村の者が銃を撃ち、Fは何処かへ消えた。


彼は戦後の今も見つかっていない。後年、YはFが叫んでいた言葉を考える事がある


“お前はトモダチ”と言っていたように思いたい。だが、どんなに考えても、


彼には


“お前の筈だった”


としか、聞こえないと言う…(終)

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「見張りの社」 低迷アクション @0516001a

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