&α
「お目覚めですか?」
「う」
「覚えてるか?」
「みず」
口元に水を、ほんのすこしだけ。
「あへえ。いきかえる」
まるで、長い眠りから覚めたみたいに。いや実際そうか。
「夢を見てた」
「覚えてるか?」
「何を?」
「交差点」
「おぼえてない」
「そうか」
それはそれで、いいのかもしれない。
「夢を見てた」
「なんの夢だ?」
「仕事に向かうあなたと、歩く夢」
夢じゃないよと言いかけて、やめた。
「いい夢じゃん」
「そうかな」
「まあ、俺最仕事が在宅側だから仕事場行ってないけどね」
なんとなくの嘘。
「なんだ。正夢じゃないのか」
「退院したら一緒に歩いてやるよ」
「交差点まで?」
なんだ。記憶あるじゃないか。
「本部への出戻り、おめでとうございます」
「ありがとうございます。もともとそういう予定だっただけですけどね」
最後までの距離 (短文詩作) 春嵐 @aiot3110
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます