天才画家と名高い俺が色盲令嬢に転生したので、人生やり直してみる
黝猫 宵
天才画家、転生しました
「…ッんだ、ここ」
真っ暗…というには明るいけど、不自然なほどモノクロな場所に来たらしい。それに埃っぽい。
慌てても仕方が無いというわけで、周りを見渡してみても手がかりは無さそうだ。
「ん?」
主に下半身に違和感を感じて視線を下にさげれば、これは、ドレス…?待て待て待て待て。は?もしやラノベによくある「転生しちゃった系」ですか?
そんな思考に辿り着けるのは、寝る前に俺が異世界ファンタジーの本を読んでいたからである。
どんな物語だったっけ…。と考える前に自分がいる状況を整理しよう。
埃っぽくて、窓なんかが見当たらない。薄暗くちょっと嫌な匂いがする。あー、これは、
(閉じ込められてる感じぃ…?)
もしかしてこの身体の持ち主、虐められてる?
まぁどうせ、(多分)閉じ込められてるこの状況で誰も来ないだろう。うん。
自分の持ちうる記憶と身体の持ち主の記憶を繋ぎ合わせる。これでも前世(?)は天才と謳われたものだ。これくらい余裕。
「俺、女になってんのぉ?!?!」
10分ほどの沈黙のあとひねり出した叫び声が、部屋にコダマしてうるさい。自分の声だけど。
俺が転生しちゃった女の子の名前は、シャノン・ベルローズというらしい。歳は15で、そこそこ名家に生まれたご息女。所謂、悪役的な立場だが、性格が悪いと言うよりかはひねくれてるイメージ。
「あ」
そこまで情報を並べてやっと思い出した。
この世界は、転生する前に読んでた『色を探して』とか言う本の中身だ。
いや、タイトルださ。とか思って読んでみたら、中々の神作で驚いたんだっけ…。作者は文章力と構成力の代わりに、ネーミングセンスを失ったんだなと思うレベル。
その中の登場人物の1人であるシャノンは、全色盲だ。
__つまり、色が分からない。
魔法が発達している代わりに、医療が発達していないこの世界で、全色盲は悪魔の呪いだと考えられていた。
そのせいで家族からの寵愛も受けられず、心から愛していた婚約者にも振られ、取り巻きたちにはバレた瞬間虐められるという、
(コイツ、哀れだな…)
記憶を辿ってみても顔をゆがめてしまうくらいには最悪である。悪役令嬢の立ち位置にしては、憎むに憎めない人間性のあるキャラクター。
ちなみに俺はわりと好きだった。
さて。頭を切りかえていこう。
自分の置かれている状況が分かれば後は単純。まずはここから出なければ……。
ついでに教えておこう。ここから出て、真っ先にすること。
それは、
俺の覚えている色を全てインプットし直すこと!
天才画家と名高い俺が色盲令嬢に転生したので、人生やり直してみる 黝猫 宵 @CumonoTansan
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