10話.[言いようがない]
「晴れてよかったねっ」
「そうだな」
「だよねっ」
一応デートのつもりだったのだがなんか余計なのが付いてきていた。
莉菜も珍しく露骨にえぇという顔をしていたから意見は一緒のようだ。
「竜平を独り占めするのはよくないと思うんだ」
「おいおい、そこは莉菜じゃないのか?」
「なんで? 僕は莉菜といるより竜平といた時間の方が遥かに長いよ?」
「だからってそんな発言をしたら怪しまれるだろ」
「違うよ、僕は単純に友達としてあんまりいられてないから気になっているんだよ」
まあいいか、とにかく莉菜の行きたいところに行けばいい。
まあ世話になったのも事実だし、俺は真と友達のままでいたいと少し前と違って思っているわけだからたまには悪くはないか。
すぐに部活が始まってゆっくりできなくなるからな。
「莉菜、竜平はシュークリームが好きなんだよ?」
「え、そうなんですか? 食べているところを見たことがありませんけど……」
「恥ずかしいんだよ、例えば目の前にシュークリームが十個あったら五個は他の人のために残して残り五個は食べちゃうからね」
「あ、それは簡単に想像できます」
流石にそこまでじゃないぞ俺は。
ひとつ食べれば十分満足できる。
人が結構いるようなら半分くれれば残りは全部あげたっていいぐらい。
「あとはそうだね、色々慣れていないだろうから積極的にくっついてみるべきだね」
「そうですかね? 日焼け止めとかも平気で塗ってくれましたけど……」
「え、それってまさか海に行ったときのこと? つまり水着姿の莉菜に触れたって?」
「はい、全く慌てることなく受け入れてくれましたよ?」
そもそもあの時点で莉菜の評価はかなり高かった。
俺が自分からいることが好きだと言ったり、実際にそう行動している時点で昔とは違うんだ。
もちろんそれがなければあれを受け入れてなかった。
それにあの時点で莉菜の態度というのは露骨なのもあったわけだからな。
「あと、似合ってるって真剣な顔で言ってもらえてドキッとしたぐらいですよ」
「そこまで大胆だと竜平らしくないなあ」
「これまではそういう人……いなかったんですか?」
「いないいない、竜平が寧ろ逃げちゃうぐらいだったから」
「でも、その逃げ癖のおかげで私は竜平先輩と出会えたわけですからね……」
本当になにがきっかけで変わるか分からない世界だ。
大袈裟に言ってしまうとこんなこともうほとんどないに違いない。
「莉菜、好きだぞ」
「ちょっ、な、なんで……急に」
「言いたくなったんだ、はっきり言ってなかった気がするからな」
これのせいで引っかかっていたんだと思う。
そのことに今更気づくなんてアホとしか言いようがないが。
「あらら、これは帰ったほうがいいのかな?」
「気にしなくていい。莉菜、行こうぜ」
「う、うん」
手を握って歩くことに専念する。
これからもこうやって前に進めればいいと思ったのだった。
70作品目 Nora @rianora_
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