第8話

「おぎゃあ!おぎゃあぁぁー!」


すこしだけ熱くなってきた5月の日曜日。


激しく泣き始める赤ちゃんをあやすべく俺の夫である優斗さんは赤ちゃんを抱いていた。


ちなみに赤ちゃんの名前はたから


元気な元気な男の子だ。


元気というと宝の母である小春姉さんも元気だ。


元気すぎて退院してからすぐに仕事で日本全国各地に出張に行きまくっている。


それもこれも優斗さんに育児休暇を与えるために。


(普通は逆だと思うんだけど……。)


だけど仕事が本当の夫みたいな姉さんは普通なんて気にせず仕事をしていたいみたいだ。


そのせいで会社で優斗さんの立場がないのではないかと優斗さんに聞くとどうやら社員の人たちは姉さんの性格をよくわかっているため逆に男としての面子をつぶされて同情されているとか。


「蓮君、宝が泣きつかれて眠っちゃったみたいだから部屋に寝かせてくるね。」


「あ、うん。お願い。」


いつの間にやら大泣きしていた宝は夢の中に行ったらしく、急に台所があるリビングは静かになった。


優斗さんの事を好きだと思うようになって8か月の時がたった。


そんな今日この頃、俺は少しだけ優斗さんに不満を抱いていた。


(最近、全然触ってこない。)


宝が生まれてからはずっと宝ばかり構っている。


そりゃ優斗さんの実子だし可愛いのはわかるけど、なんだかそのせいで全然かわいがってもらえてない俺は生まれたばかりの赤ちゃんにまで嫉妬している始末だ。


(………ひ、久しぶりにあの格好、してみようかな。)


俺は近くにかけてあったエプロンを手に取った。


この家に来たばかりの頃、一度だけした格好。


それ以降しなかったのはそんな恰好で誘わなくても、俺が嫌がってないとわかった優斗さんが暇さえあれば俺に触ってきていたからだ。


だけどこの8か月、異常なまでに優斗さんに抱かれてきた俺はひどく今欲求不満で仕方ない。


こんなことをするのはとても恥ずかしいけど、でも宝も今は眠ったわけだし、さらに言えば昼食の準備も大方できた。


後は時間になったら食べるだけ。


そう思いながら俺は以前は無理やりさせられた裸エプロンという格好を今度は進んでやってみる。


だけど―――――


(や、やっぱり恥ずかしすぎる!)


寝室ならともかく、こんなところで裸で立っているとかもう無理。


やっぱり服を着よう。


そう思い脱ぎ捨てたズボンを拾い上げようと前かがみになった瞬間だった。


「着てしまうの?蓮君。」


前かがみになった俺の上に覆いかぶさるように俺に合わせて前かがみになりつつ俺を抱きしめてくる優斗さん。


突然抱き着かれたことに驚き声を上げかける俺のお尻に固いものが当たる。


(う、嘘。まさか優斗さん、もう――――――)


相変わらず優斗さんはお早いようだ。


「ひどいよ、蓮君。俺はちゃんと良いお父さんになろうと努力してるのに、君はこうやって俺を悪い父親にしようとするなんて。」


嬉しそうに笑いながら耳元で話しかけてくる優斗さん。


その優斗さんの息遣いは少し荒い。


ひどいと言いつつ嬉しそうな当たりやはり優斗さんだってこの状況を好ましく思っているようだ。


というか……


「別に悪い父親にしたいんじゃなくて、俺はその、少しだけ構ってほしかっただけで……。」


触ってくれないのが少し、寂しかっただけなんだ。


そういおうとした瞬間だった。


優斗さんは俺のお尻の穴に自分の指を侵入させてきた。


久しぶりにされるそれはあまりに久々すぎて一気に俺の全身を甘くしびれさせてくる。


だけどそんな甘いしびれに俺は抵抗して優斗さんに「待って」と声をかける。


だって――――――


「優斗さん、俺まだその、お尻の準備してない……。」


そう、中の洗浄が終わっていないのだ。


優斗さんの妻になろうと決めてからは男同士のあれやそれを少し勉強した。


ちゃんと洗浄してやらないとということを知ってからはいつも洗浄してからしていた。


だから本当はこのまま優斗さんのが欲しいけど、俺は優斗さんに待ったをかけた。


「……じゃあ、俺が洗ってあげる。ねぇ蓮君、こんなふうに俺を誘惑したんだからまさか嫌だなんて言って俺を待たせたりなんてしないよね?」


何時もは優しい優斗さんが意地の悪そうな声で意地悪く俺が困ることを言ってくる。


そんな恥ずかしい事と思うけど、だけど俺だってもう優斗さんに触られたくて仕方ない。


「洗うでも何でもいいから、もっと俺に触って。」


ひどく恥ずかしいけど俺は自分の本心を伝える。


すると俺の本心を受けて優斗さんは俺を抱き上げると俺を風呂まで連れてきた。


その瞬間、ちょっと俺は今思い出さなくていいことを思い出してしまう。


「……ねぇ優斗さん。あの、今聞くことじゃないけど、最近また俺の下着取ってる?」


このタイミングで聞くのはと思うけど思い出したタイミングで聞いておかないとまた忘れてしまう。


そう思って俺は優斗さんに聞かずにはいられなかった。


しかもなくなるのは洗濯機の中選択前の下着だ。


「ば、ばれてたかぁ……。」


「ばれてたじゃない!」


困ったように笑う優斗さんの胸を俺は数回軽く殴る。


本当にこの人は……。


後々知ったことだけどどうやら俺が小さいころから優斗さんは俺の私物を盗んだり、俺の盗撮写真を天音から買ったりしていたらしい。


私物は盗んだら全く同じものを新品で返してきていたみたいで全く気付かなかった。


ならなぜ気づいたかって?


その事実を知った俺は自分の下着に俺だけがわかる印をつけていたのだ。


流石にそれに優斗さんは気づいていなかったらしい。


俺が何も知らないと思って盗んだ下着をどうせおかずにでもしてたんだ。


「俺の下着じゃなくて、俺にしてよ。」


こっちは触られなさ過ぎて欲求不満だというのに何人の下着でぬいてるんだか。


「……蓮君、ふてくされて頬膨らませてるの可愛い。」


「う、うるさい!俺は怒ってんの!!」


優斗さんの反応に怒る俺を優斗さんはまるで子供をあやすようにあやしてくる。


けどそれを嫌じゃないと俺は思ってしまうほどもう優斗さんにメロメロだ。


「……いっぱい抱いて。じゃないと許さないから。」


俺は少し不機嫌なまま優斗さんに唇を重ねた。


するとそんな俺の言葉にこたえるように優斗さんが俺に口づけをしてくる。


俺は多分もう、優斗さんなしでは生きられない。


まんまと小春姉さんの思惑にはめられてしまったような気がする。


「優斗さん、ちゃんと俺を淫乱にした責任とって生涯俺だけを妻として愛してよね。」


「蓮君も俺だけを夫として愛してね。」


唇が離れた一瞬、俺たちは各々の思いを口にした。


そしてまたキスをはじめとして俺たちは深く深くつながっていくのだった。




姉と義兄の契約結婚。~義兄の妻は姉でなく俺~   完







あとがき

どうも、作者のマオマオ。です。

あまり性描写があるBLは読むのも書くのも恥ずかしくて苦手なのですが、

今回ちょいと頑張って書いてみました。

本当はもっといろいろな場面を書いてみたかったのですが、それはもし続編を望んでくださる方や、番外編を望んでくださる方がいらっしゃったら書かせていただきたいなと思います。


一日で何かの勢いで書き上げた本作ですが、気に入っていただけたなら幸いです。


そしてもしよかったら私のほかの作品も見てやっていただけると嬉しいです。


ここまで本当に読んでいただきありがとうございました。


またどこかでお会いしましょう!


マオマオ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

姉と義兄の契約結婚。~義兄の妻は姉でなく俺~【短編 完結】 マオマオ。 @maomao_meroniro

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ