scene31: 悪い子
終業式の日、澪と朱里は学校を休んだ。
薄暗い澪の部屋の中で彼女が両手を上げていると、朝から着ていたサンドピンクのルームウェアが引き抜かれるように脱がされてしまった。背後に立っていた朱里はまだ熱の残っているそれを名残惜しそうにベッドの上へ乗せると、上半身が白のインナーだけになった澪に後ろから腕を回す。
「朱里ちゃん、今着替えてるのに」
「ちょっとだけ。ちょっとだけでいいから」
「ダメ……まだブラもつけてないんだよ……?」
澪は、わざわざ浅海家までやってきた朱里と打ち解けた後、二人で外へ遊びに出る予定になった。朱里の服装に合わせて澪もセーラー服に着替えるのだが、朝からいきなり澪の居ない時間を過ごす羽目になった朱里がその姿を前に正気を失いつつあった。
このまま流されていては、家から出られないまま日が暮れてしまう――それを分かっていた澪は適当にあしらいながらもインナーを脱ぎ捨てる。
「みお」
「我慢して、朱里ちゃん」
「無理。今日凄く疲れたから」
「ちょっと、まって、まってよ……」
露わになった背中へ朱里がぴたりと貼りついた。部屋の中が暗いとはいえ、全くの無防備であるところを狙われた澪はなすすべもなく身体を明け渡してしまう。
「ひぁっ……」
「寝汗の匂いがする」
「やめてよ、変態みたいじゃん」
「私がこうなっちゃうの、澪の前だけだよ」
相変わらず盛り上がりに欠けるところを探りながら朱里が湿っぽく囁く。いじられっぱなしの澪はくすぐったさを堪えながら声を出すまいとお腹に力を入れた。
「なんでこうなっちゃったんだろ……昔から何してても長続きしなかったのに」
「朱里ちゃん、何でもできそうなのに」
「何でもできたからだよ。器用貧乏ってやつ……なんかそこそこできちゃって、それで満足して終わり。一度やったから興味もなくなる」
「私は?」
「澪は別」
うなじに顔を埋めながら朱里が目を閉じる。
「澪がいるうちは、頑張れるよ。この命だって澪に拾ってもらったものだし」
「私だって……」
「……そういうところ、好き」
最終的に身を任せてしまった澪は、背後の朱里から背中のあちこちに口付けを受ける。まるで彼女のものにされているような不思議な感覚に口元が緩んでしまった。
「朱里ちゃん、そろそろ……」
「しかたないなぁ」
澪の言葉に渋々従った朱里は立ち上がると、近くにあった洋服入れの引き出しを引っ張り、フリフリのついた白く可愛い下着を取り出す。"あの日"にもつけていたものだ。
そして澪の後ろへ戻ると、滑らかな素肌の上にそれをあてがい、慣れたような手付きで澪の身体のあちこちを引っ張ってブラをつけ始める。
「澪は、これからとっても悪い子になるんだよ。制服の下に、こんなに可愛い下着をつけてるなんて……しかも、終業式の日に、一番ちゃんとしないといけない日に、先生にバレたら怒られちゃうようなブラ……」
「やめて、恥ずかしい……」
「あーヤバい、澪って真面目なイメージあったから、こういう設定ハマる」
もはや主導権は朱里に奪われていた。お腹を優しく撫で回された澪は蕩けた顔で朱里へもたれかかる。
朱里の手によって、澪の身体は普段より少しだけ山を高くしていた。その上から黒いシャツを着せ、夏用のセーラー服を着せる。僅かに隙間のできた裾からは、およそ真面目な生徒には似つかわしくない黒色が覗いている。スカートの丈もいつもより短い。
「はい、これで澪も不良だね。普段より胸のあたり盛ってみた」
「なんか変な感じ……」
「しばらくしたら慣れるって。あー、澪が悪い子になっちゃった……湊先生にバレたら卒倒物だよ」
言われっぱなしの澪は子供のような悔しさを腹に抱えていたが、ふと面白いことを思いついて朱里との距離を詰める。肩に手を乗せ、恍惚に憑かれた表情で顔を近づけた。
「朱里ちゃん」
「澪……?」
「……学校なんて、休んじゃお?」
それを聞いた朱里は、澪に抱きついて下を向いたまま、低い声で唸るだけとなってしまった。
「それずるいよ」
「お返し」
「そんなこと言われたら休むしかないじゃん」
すっかりやられた様子の朱里を抱きかかえながら澪は悪い笑みを浮かべていた。大人の目から逃れた子供が新しい遊びを見つけてしまった時のような顔だった。
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