紫のアジサイとプリン
一ヶ月が経ちました。
昨日の雨でお腹一杯になったアジサイが、鮮やかな紫色を自慢するように、美しく咲き誇っています。葉っぱにはまだ雨の雫がきらきらと残っていて、カタツムリが喜んでいました。梅雨の晴れ間のよいお天気の日です。
「今日も雨だったら、どうしようかと思っていたの」
公園でみけの姿を見つけたしろが、お日様のような笑顔で嬉しそうにやってきました。
しろは病気なので、あまり外に出られないのです。とくに雨の日は絶対に駄目なのです。
みけは、悲しくなりました。
しろは、一昨日の朝、羽化したばかりのトンボが、野原にやってきたことを知らないのです。
しろは、昨日の晩、飛べるようになったホタルが、夜の川を照らしていたことを知らないのです。
耳が垂れてしまったみけを、しろが心配そうに見つめていました。みけは慌ててお菓子の容器を取り出しました。今日は、まるでアジサイの花のような不思議な紫色のプリンです。
「ええっ!? これがプリンなの?」
「元気がいっぱい入ったお芋で出来ているんだよ」
初めて見るプリンに、しろの目はまん丸です。ひげをぴんぴんにして、みけにもどきどきが伝わってくるような手つきで蓋を開けました。
プリンをすくいながら、みけは、しろの知らない話をたくさんしてあげました。
みけがひとつ面白い話をすると、「まぁ!」
みけがひとつ不思議な話をすると、「ええ!?」
しろのひげがぴん、尻尾がぴぴん、と忙しく揺れ動きます。
帰るとき、しろは「とっても楽しかったわ。ありがとう」と、お日様のような笑顔を見せてくれました。
みけは、いっそう丁寧に自分の三毛模様を舐めました。
しろと一緒に見たいものが、とてもたくさんありました。
しろと一緒に行きたいところが、とてもたくさんありました。
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