青いオオイヌノフグリと飴

 一ヶ月が過ぎました。

 みけの手の中には飴玉の包み紙が二つ握られていました。まん丸でとても大きな飴玉です。

 みけが、ぱっと手を開いたとき、しろは「うわっ、大きい!」と、ひげをぴんぴんにしました。

 包み紙を開くと、大きな青い玉がころんと出てきました。表面には細かいお砂糖がまぶされていて、きらきらと宝石のように輝いています。まるで、しろの目のように綺麗です。

 二人は飴をつまんでお日様にかざしてみました。

 空よりも青い青い美しい光が透けて出て、思わずうっとりです。

「食べちゃうのがもったいないわ」

 ため息をつきながら、しろが呟きました。みけも同じ気持ちです。

 二人は額を寄せ合って困ってしまっていました。

 さやさやと暖かい風が吹いています。

 足元のオオイヌノフグリたちが二人を見てくすくすと笑うように揺れました。いいえ、ひょっとしたら自分のほうがもっと綺麗な青い色だと、ぶうぶう文句を言ったのかもしれません。

 とても素敵な飴ですが、まわりのお砂糖がだんだん溶けてきてしまいました。指がぺとぺとです。

 二人は思い切って、「えーい」と同時に飴を口に入れました。

「おいしい!」

 右に、ぽこっ。

 みけの頬っぺたが膨れます。

 左に、ぷくっ。

「みけったら、変な顔!」

 みけが、かわりばんこに頬を膨らませると、しろが口から飴を落としてしまいそうなほど大声で笑いました。

 ぽこっ。

 ぷくっ。

 今度はしろも一緒に頬を膨らませます。

 ぽこっ。

 ぷくっ……。

 口の中から飴が消える頃、しろのお母さんが迎えに来ました。また白い袋を提げています。

 しろは淋しそうな顔をしましたが、「ありがとう。また来月ね」と言って、行ってしまいました。

 みけの心は、きゅうっとしぼんでしまいました。

 去っていく二人を見ながら、ふとお母さんが持っている袋をどこかで見たような気がしました。

 帰り道、みけは、はっとしました。

 公園を出たところには、とら先生の病院がありました。白い袋は薬の袋でした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る