白いサクラとソフトクリーム

 ある春の日のことでした。

 みけは公園でソフトクリーム食べながらお散歩をしていました。

 お手伝いのお駄賃で買った大切なソフトクリームです。くるくるっと綺麗に渦を巻いた白いクリームがとても素敵です。思わずうっとりしてしまいます。

 ぽかぽかと暖かい日で、ちょっと気の早いソフトクリームは気持ちよく口の中に溶けていきました。

 頭の上では咲き始めたばかりのサクラの花が白く光り輝いています。みけのソフトクリームに負けないくらい白くつやつやしています。どっちも素敵な白い色です。

「おいしそうね」

 見知らぬ女の子のねこがベンチに座っていました。みけのソフトクリームのように真っ白でふわふわの毛皮です。

「私は、しろ。あなたは?」

「僕は、みけ」

 いきなり声をかけられたので、みけはどきどきしていました。けれど、しろの口元はにこにこと笑っていて、青い目も楽しそうにきらきらしています。とてもとても可愛い女の子でした。

 なので、みけは、思い切って言いました。

「君も、舐める?」

 おずおずと、ソフトクリームを差し出します。

「いいの!?」

 しろは、ひげをぴんと立てました。

「私、甘いもの大好き!」

 ぺろり。

 しろがソフトクリームを舐めます。

「おいしい!」

 お日様のような笑顔で、みけにソフトクリームを返しました。

 みけがぺろんと舐めて、また、しろに渡します。

 ぺろり。

 ぺろん。

 ぺろり。

 ぺろん……。

 みけは楽しくなってきました。

 一人で食べてもおいしいソフトクリームでしたが、二人で食べるともっとおいしいのです。

 ぺろり。

 ぺろん。

 ついにソフトクリームはなくなってしまいました。

「おいしかった!」

 二人は同時に叫びました。

「ありがとう!」

 しろは、しっぽをぴんと立てて、みけの手を握りました。

 そのとき、「しろちゃーん」という声が聞こえてきました。公園の入り口で白い袋を持った、しろによく似た女の人が手を振っています。

「お母さんだ。私、行かなくちゃ」

 駆け出そうとするしろに、みけは慌てて尋ねました。

「また、逢える?」

「うん。一ヵ月後に、また来なくちゃいけないから」

 みけは、今度逢うときもお菓子を持ってこようと思いました。

 心が、ほんわかあったかでした。

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