第38話 12 宇宙超心理学



「今、何かおっしゃいましたか?」


「いえいえ、とんでもございません。独り言ですがな。で、お久しぶりです、モリコーネ名誉教授」


 地位で言うならば、マルセリーノは統括教授であるが、年齢ではモリコーネの方が断然に上である。

必然的に敬語になる。

マルセリーノも其処までのアホではない。


「お久しぶりですね、マルセリーノ統括教授」


「実は、地球いう星のちっちゃい女の子の事で相談があって連絡させてもろたんです」


「はい、その前に、『だいぶ歳やったしな、死んでんちゃう』と言う言葉を訂正していただけますか?」


「え、名誉教授って、実は能力者?」


「この分野の研究者たちは、いずれも違いはあれ、それぞれに特化した能力を備えています。ただ、私たちの分野では覚醒者と呼んでおりますが」


「済みませんでした。お歳を召しておられますが、お元気であられると思っておりました」

(何んか、最近、面倒臭い奴、多なってへん?)


「今、何かおっしゃいましたか?」

(うっ)


「ま、いいでしょう。どのような御用件ですか?」


 マルセリーノは覚えている事を全て話すのではなく、要点だけをまとめて質問をした。

必要であれば、細かいことはモリコーネが能力を使って、こちらの胸の内を読んでくるであろう。


「ええ、先ず最初に、その女の子なんですけど、一人で居る時に誰かとお話が出来るらしいんです」


「なるほど、それは宇宙心理学の分野でも解決できそうですね。自分自身を心の中に閉じ込めようとする子供達は、心の中に親友を作ります。自分自身は心の中に閉ざされているので、心の中が現実になっていきます。ですので、心の中にいる親友は実在するものへと変化していきます。逆に心の外の世界の現実世界が嘘の世界になっていく訳です」


「分かりました。では、次の質問をさせて下さい。ある時の話しなんですけど、笑うてる父親の胸の中かから泣き声が聞こえる、言うんです。それと同時に母親は胸の中の扉をしっかり閉めてる、言うんです。これは、どう説明できますか?」


「そうですか。先程のお話と合わせて考えると、宇宙超心理学の分野かもしれませんね。私と同じ能力かもしれません。いわゆる相手の気持ちを敏感に察知できる能力ですね。これは、感性の鋭い生物によく現れる覚醒現象です。例えば芸術家などによくあるタイプです。いいですか、マルセリーノ統括教授、これは更に言えば傷つきやすい心を持っているとも言えます。統括教授に渡された指令は、その子を守る事ですか?」


「いや、ちゃうんです。ただ、その子を守らなあかん事が、今回渡された指令を実行することの一つになるんです」


「なるほど。でも統括教授は、その子を守ることを最優先にしたいと思っている訳ですね」

(さすがや! こんだけ離れた星と星やのに超時空回線使って心を読んどる)


「今、何かおっしゃいましたか?」


「いえ、さすが、この分野の権威であるモリコーネ名誉教授だと思いました」


「え? 聞こえなかったのですが」


「さすが、モリコーネ名誉教授です」


「もう一度言ってもらえますか?」


「・・・・・・・・・。」


「・・・・・・・・・。」


「お前、ほんまは聞こえてるやろ?」


「・・・・・・・・・。」

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