第33話 7 お誕生日会



 この日は、彩香の誕生日である。

母親は小さなバースデイ・ケーキに3本の蝋燭を立てて火を付けた。

彩香がお願い事をして、一気に蝋燭の炎を吹き消す。

3人だけの、ささやかなお誕生日会だが、彩香は上機嫌である。

父親と母親が交互にプレゼントを手渡す。


 母親が、今日だけ特別にと、彩香の好きな物だけを作ってテーブルに並べる。

彩香のはしゃいだ声が一層高まる。


「美味しい?」


と母親が尋ねると


「うん、おいしいよ」


 と愛娘が返事をする


「良かったね、彩香の好きな物ばかりで」


 と父親が嬉しそうに言うと


「うん、あやか、うれしい」


 と父親以上に嬉しそうな顔で愛する宝物が答える。

然し、夫婦二人は言葉を掛け合うどころか、目を合わせもしない。


(お前らなぁ、その雰囲気、あやちゃんに気づかれてないとでも思てんのか)


 と彩香の膝の上に乗せられているぺペンギンが表情も変えずに声に出そうにな

る。

然し、今、出そうになる声を止めるよりも苦労している事がある。


(ワイ、いつまで、この体制でじーっとしとかなあかんの?)

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